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『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

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「高科冴子さん。高科保氏の娘さんで、お父さんが刺されてるんを最初に見つけられた。その時の状況を、詳しく話してもらえますか?」
「はい」と、すがるような眼差しで滋を見てから、赤くなった目にハンカチを当てながら話し始めた。
 滋は冴子の横に歩み寄って、肩に手を置いた。

「昼食を取るためにキッチンに行こうとしたら、応接室の扉が開いてたんです。なにげなく見たら、ソファに横になってる父が見えました。そのままキッチンに行こうとしたんですけど、なんか気になって中に入ってみたら、寝てるんじゃない、死んでる、と分かって・・・ナイフが、胸に、胸にナイフが、刺さってるんが分かって、死んでる、と、血が出てるんが分かって、生きてるかなと、死んでるなんて、どうして、どうしてなのか、父さんは病院ですよね。生きていたんですか?」
「大丈夫ですか? 少し興奮されてるようなんで、また後にお聞きしましょうか」
「いえ、大丈夫です。父は、病院にいるんですか?」
「残念ながら・・・司法解剖に処してる最中です。ざっと見たところでは、死後12時間から24時間経ってるとみてるんですが、その時間帯に、おふたりは御在宅で?」

「いえ、ふたりとも出かけてました。私は母が寝たきりなもんで、土曜日の午後から日曜日にかけては毎週、実家に戻ってます」
「ご実家は?」
「高槻です。週一ぐらいは兄嫁を開放せんと」
「昨日は何時に、家を出られました?」
「昼食だけ用意しといて、2時ごろに」
「その時ご主人は?」
「診察は12時までですが、私が家を出るちょっと前に病院から戻って来て、食事を始めました」
「念のためにお尋ねしますけど、何を」
「土曜日は私も急いでますんで、たいていは焼きめしを」
「誰かとお会いになる、ちゅうことは、お聞きで?」
「いえ、聞いておりません」