『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)
家族以外の指紋は、どこからも検出されなかった。
凶器は果物ナイフで、付着している血液のDNA鑑定の結果を待つこととなった。
それと、誰がピアノを弾いていたのか。
ピアノからも、新たな指紋は検出されなかったのである。手袋をしては弾けないだろう。
情報提供者である女性にショパンのノクターン第2番を聞かせると、「いやぁ、その曲でんがな」と自信を持って言った。
ファイルの書類で、無くなっている物があるのかないのか。
ファイルに付いているタイトルは、『未受精卵の核除去による細胞融合』と、そういった関連タイトル名が多い。
レポートに使われている用紙には、山梨大学医学部の名が入っており、どれも黄ばんでいる。
家族も看護師たちもその論文類や、過去にどんな研究あるいは専門に携わっていたのかを知らない。
長い間継続している研究があるからと、病院は非情勤勤務医にまかせて、2カ月に1度山梨大学に行っていたのだが、その内容に付いて問いかけたことはない、と皆が答えた。
作品名:『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン) 作家名:健忘真実