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『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

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 小塚滋はまだ残っていた。冴子と並んで黙ったままうつむき、腰かけている。
 村田巡査部長は音たてて部屋に入って行くと、問いかけた。
「冴子さんは、よくピアノを弾いてるそうですね。その曲はなんといいますか?」
「刑事さん、それが事件と、関係してるんですか?」
と、問い返したのは滋である。
 滋は、少しでも冴子の不安を減らしたい、と思っている。

「昨日の4時ごろ、高科さんが普段からよく弾いておられるとかいう曲が聞こえてた、との証言を得ましてね。誰か、心当たりはおありで?」
 冴子は、青白い顔色から一層血の気が引いていき、卒倒しそうだった。犯人かも知れない見知らぬ誰かが自分のピアノを触っていた、と思うと、不気味さが増したのである。
 ピアノは応接室にある。

「そんな・・・まったく、分かりません」
「なんの曲?」
「ショパンのノクターン第2番作品9の2。この曲、大好きなんです。気持ちが落ち着いてきて。でも、私じゃありません!」
「そうですよ。昨日は僕と一緒だったんですからね!」