それから【完結】
うれしくて声を出した。
うれしくて思わず声が出てしまったなんてことは、
このときの彼女からの返事を読んだほかに、
僕の人生の中にあっただろうか?
目標にしていた、丘の上の私立高校に合格したときも、
推薦枠の極めて少ない医学部に進めたときも、
先月、循環器内科の部長からアメリカ行きの話しをもらったときも、
うれしくないはずはなかったし、素直に喜んだけど、
あの日の彼女からの返事に目を通したときの喜びにはかなわなかった。
その理由を考えたことはなかったけど、
なんとなくわかっていることがあった。
それは、彼女が一緒に喜んでくれたということだ。
彼女は突然送ったチケットをすてきなプレゼントだと喜んでくれた。
ライブの日には必ず来てくれるという返事だった。
いつもと違い短くて、
とても文学的なまるで詩のような手紙だった。
僕は俄然受験勉強にやる気が沸いて、
必死に勉強をしながらライブの日を楽しみにした。
BGMはもちろん、僕と彼女の大好きなあのバンドの曲だった。
♪僕が世界を変えてやる
それは僕が変わること
僕が僕を変えること
それは世界を変えること♪
彼女のお気に入りの曲が、僕のお気に入りにもなった。