それから【完結】
僕は怖かった。
自分さえ見ようとしていなかった僕が、
変わろうとすることはとても怖いことだった。
僕はそのころ新しくリリースされた、
あのバンドのアルバムを何度も何度も聴きながら、
変わるためには、一体何をすればいいのか、
今の僕はどんな自分に変わりたいのか、
そんなことを、ずっと考えていた。
簡単に答えなど出るわけもなく、
学校でも家でも相変わらずな自分に嫌気がさした。
僕の周りには、僕が変わろうと変わるまいと
どうでもいい人達しかいない。
僕は一週間ほどそればかり考えた。
部活で活躍したいとか、クラスの人気者になりたいとか、
親の顔色を窺って生活しないで済むようになりたいとか、
そういう自分に変わることが重要なのではなく、
彼女に嘘をついていた自分を、彼女に本当の自分を曝け出せない自分を
変えることが、僕にとって最も大切なことだと気が付いた。
それでも、何をすれば変われるのかはわからないままだった。
僕は彼女に手紙を書いた。
本当の自分を正直に書こうと決めた。
僕は本当は彼女の思っているような考えじゃなく、
格好をつけていただけだったこと。
僕は本当のことを、口にする勇気もないということ。
僕にはパンクロックの心がないということ。
僕は自分のことが嫌いだということ。
今まで彼女の手紙にデタラメばかり書いていたこと。
そして、変わらなくちゃいけないのは僕だということ。
とにかく、彼女に謝りたかった。
彼女からの手紙を読むたび胸が痛かったことは書かなかった。
僕はいつもより長い手紙を書いた。