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桃井みりお
桃井みりお
novelistID. 44422
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それから【完結】

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「もう、13年前になるんですよ。
 あの子が中学校3年生の夏でした。
 7月に入った頃から病状が悪化していたんですが、
 8月4日の夕方に眠るように逝きました」

 そのあと彼女の母親と一体どんな会話をしたのだろうか、
僕は彼女が見ていた夕日を見たくて、
彼女の入院していた病院の場所を聞いた。

 どれくらい時間が経ったのかもわからなかった。

 僕は病院の駐車場で彼女から届いた
最後の手紙を胸ポケットから取り出した。

『すてきなプレゼントをありがとう。
 きょうの午後に届いたので、すぐ返事を書いています。
 でも、ポストに入れるのは明日になってしまうわ。
 しかたないのだけど、少しでも早く伝えたいの。
 たいせつな気持ちを伝えたいの。

 あさ、目を覚ますのが楽しみなの。
 りんかくのはっきりした太陽が、
 がんばれって言ってくれるわ。
 とてもやさしいあなたのようで、
 うれしくて涙が出ちゃうわ。

 さいごの光がもうすぐ沈むわ。
 よるを怖がるのはもう止めたの。
 うまれてくる光が美しいのは、
 ながい夜があるからなんだもの。
 らいぶの日、必ず会場へ行くわ。』

 僕は今まで何度もこの手紙を読み返していたけど、
初めて涙が出た。

 そのとき、僕の頬を風が撫でた。

 あの日、彼女は来てたんだと思った、
あのライブ会場に来ていたんだ。

 あの日も僕の涙を彼女は拭ってくれたんだと思った。

 彼女が好きになった夕日が沈んでゆく。
とてもきれいだ。

 そして、僕の車のステレオからは、
あの日アンコールでも演奏されなかった
彼女と僕のお気に入りの曲が流れていた。

♪僕が世界を変えてやる
 それは僕が変わること

 僕が僕を変えること
 それは世界を変えること♪
                           〈了〉

作品名:それから【完結】 作家名:桃井みりお