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桃井みりお
桃井みりお
novelistID. 44422
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それから【完結】

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 僕は次の休みに思い切って
彼女の住む街に行くことにした。
彼女からの最後の手紙を胸ポケットに入れ、
僕は車を走らせた。

 高速を使えば5時間あまりで行ける。
途中、サービスエリアで休憩をとった時、
あまりにも行動的な自分に驚いた。
普段の僕は何事にも慎重でよく考えてから行動する。
それはよく言った場合で、実のところは臆病で後ろ向きなだけだ。

 今までも、彼女の街に行ってみようと考えたことはあった。
でも、会いに行って傷つく自分を想像して行動に移せなかった。

 アメリカ行きを前にして、僕は後悔を残したくなかった。

 僕はただ、彼女に一言感謝の言葉を言いたかった。
彼女のおかげでがんばれた自分を見て欲しかった。
きっと彼女はにこやかに笑ってくれるだろうと思った。
そして彼女は僕の選んだ道を「間違っていない」と言ってくれるだろう。

 あのライブの日に伝えられなかった
気持ちを伝えたかった。

 答えはわかってる。

 それでも僕はちゃんと彼女への思いを
伝えなくちゃいけないと思っていた。

 中学生の僕にとってあんなにも遠かった彼女の街が、
今の僕には簡単に行ける距離なのがとても悔しい。

 もうしばらくで彼女の街に入る頃、
僕はこのごろあまり聴かなくなっていた
あのバンドのCDをかけた。

 15年経った。

 彼らのバンドもいろいろあったみたいだが、
今も地道に活動しているらしい。
懐かしい曲があの頃のことを思い出させる。
彼女はこのあたりを歩いていたのかな。

 カーナビが「案内を終了します」と言って気がついた。

 ここまで来て、いつもの僕が顔を出す。
急に会いに来たりして迷惑じゃないだろうか?
それこそ、もう僕のことなんて覚えていないんじゃないか?
彼女も28歳の女性だし、結婚している場合もあるだろう。
そうしたら、この街にすでに住んでいないこともあり得るだろう。

 そんなことを考えていると、カーステレオから
いつか、彼女が訳詞した曲が流れてきた。

♪あなたなら何でも出来る、だからその手を開いてごらん♪

 僕は胸ポケットにそっと手をあて、
覚悟を決め車を降りた。

 僕は彼女の自宅の前でしばらく佇んで、
そっとインターホンを押した。

 玄関のドアが開き、女性が現れた。

作品名:それから【完結】 作家名:桃井みりお