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02



次の日。
朝日が顔に差し込んで眩しくなって目覚めた。
普段日さは差さないのに今日に限ってそうなったのは多分、カーテンを閉め忘れたからなんだろう。
床で寝たから少しばかり背中が痛い。いやな痛みではないのは事実だ。

体を起こして布団からでた。まだ少しコノぬくもりに包まれていたいが起きなければ。
出来る事ならば全てを早く済ませてしまいたい。

「・・・・。」

未だ、2人は夢の中だ。気持ちよさそうに寝ている。
起こすのは野暮なのでそういうことはしない。眺めていると、昨日の一件が鮮明に蘇る。
少しでも嬉しがっていた自分がいたのだ。

----散歩にでも行こうかな。

一人になりたい。
このままコノ場所にいたら、多分、視野とか色んな物が狭くなりそうで。押しつぶされそうになりそうで。

暖かい格好をして、冷たい廊下を渡り、外に飛び出す様にでた。
外はまだ完全には晴れていなくて淡い感じだった。自分の心のようで、気持ちホッとした。
行き先は昨日の場所だといつの間にか心の中で決めていたからその場所へと歩みだす。

夜だったから余り気付かなかったけれど、あの場所へは結構な距離がある。あの双子はもうそんなことは麻痺していたのだろう。
朝だから人通りは少なく空気によって流れてくる香りだけが身近にいた。その香りは回りに生えている果物だろう。
時期的に今は林檎だ。もう少しで蜜柑もだろうと何処かの誰かが言っていたのを覚えている。
周りを見れば青かったり赤かったりと沢山だ。
学校とは違って街の人は余り俺に対しては良い目をしない。それが普通なんだ。
だけど、たまに聞こえてくる小言はいい気はしない。俺は望んでこんな容姿とか家系になった訳ではない。

思い出さないようにしよう。折角の散歩が駄目になりそうだ。

昨日出会った丘までにはこの果樹園を抜けて、最近建った変な館を抜けて少しばかり段数の多い階段を上ったところにある。
良くすんなりといけたものだと思う。
色々と考えているうちに何時の間にか果樹園は抜けていた。
代わりに出てきたのは変な館だ。
無駄に大きく、無駄に暗そうな館。俺の趣味の範囲であるが、ずっと住もうとは思わない。
一体どんな人が住んでいるのか・・・。

「あら、おはよう。早いのね。」
「・・・・。」

門の周りにワッサワッサしている薔薇に水をあげているロリっぽい人がいた。
ツインテールだ。未だにいたのか。

「今物凄く失礼な感想を述べたわね?」
「いや・・・。」

そんなことは、ありますが。
というか、小さくね?完璧に俺を見上げていらっしゃる。梓よりも断然小さい。ミニマムだ。

「あんたねぇ・・・・。ミニマムの何処がいけないのよ!!」
「あ、あれ?」

プリプリと怒っているロリちゃん(仮)。絵になるような気がすると思うのはきっと俺だけじゃないはずだ。

「顔でわかるわ!無表情の癖に微妙に違うんだもの。」
「はぁ・・。」

なんで初めて会う人とここまで話すんだろう。俺何かしたか?むしろ吹っかけてきたのはそちらだ。
早く丘に行きたい。

「まぁ、いいわ。今から丘に行くの?」
「まぁ、そんなとこ。」

ふーん、と腕を組んで何かを考えている。そしてなにかブツブツ言ってる。それをはっきりと聞き取る事は出来なかった。
一応プライバシーがあるし、進んで聞こうとも思わない。

「随分と信仰深いのね。」

信仰か。そういう風に見られてしまうのか。今初めて知った。
別に何にも入ってはいない。寧ろ入れない状況だ。この際どう答えるべきなのか。

「・・・まぁ。」

濁しておこう。別に初対面だし、これ以上出会うことはないだろう。というか出来る事なら会いたくないな。うん。

「そうなの。気をつけなさいよ。」
「?」

何に、とは言えなかった。
良く分からないまま、館から過ぎて行った。後ろを振り向くと、ロリちゃん(仮)はもういなくなっていたのだ。
もしかしたら、あの子が住人だったりするのだろうか。
でも、服装とか態度見て推測すると、そんな感じもする。ここの住人みたいに白ではないから。

「他人の事だし。」

深追いはしない。詮索もしない。
歩くたびにそんな思いは地面に踏みしめてしまえ。

長い階段。
何回か此処には来たことがあるが、別に嫌になった事はない。
パワースポットとか、宗教に使われるとかそんなことはどうでもいいのだ。
頂上から眺める風景が単に好きなだけだ。きっとそのランクはでかい。例のCDよりは今は好きになっている可能性だって大いにある。
そのくらいのものだ。別に、夕方でも構わないのだが、どちらかといえば朝の澄み切った感じのほうが俺に会う、気がする。

一段、一段と踏むたびに何かが弾けるような気分になる。コレがワクワクしている証拠なのかは良く分からない。
余り自分の中には興味がわかない。ただ、コレが切ない感じがする事だけは良く理解している。
しかも、今日は一段とだ。弾けるっていうより、破裂?みたいな。身体的病気ではなさそうだ。

「なんなんだろう・・・。」

頂上に着き下のほうから風が吹いてくる。コノ風を利用して飛べそうな気がする。
だが嬉しくない事に、この無駄にでかい樹のせいでその風は止まってしまうのだ。





「っ・・・・!!」

痛い。なんだこれ。
さっき弾けてるとは破裂だの、部分が。やっぱ身体的だったのだろうか。
詳しく説明すると、心臓の辺りが痛い。てことは、心臓がそうなるのか・・・?
考えただけで嫌になりそうだ。
なんだこれなんだこれ。

立っているのが無理そうになり、仕方ないが樹に背を預けて座り込む事にした。
座った瞬間に、風のせいで服やら髪の毛なんかが吹き上がる。水の中に入ったような感じ。
潤いの代わりにこの激しい痛みが俺の体にまとわりつく。

「痛い・・・。」

本格的に痛くなってきた。俺、死ぬのかな。死ぬのなら。

「御兄弟の前じゃなくて良かったかも、な。」

少しだけ、安心したせいか、一気に意識がフッと飛んだ。
死んだのかなって思ってしまうほどに。









************
「・・・・・。」

周りには、きっとお花畑が広がっていて俺の前にはきっと、神様と閻魔大王が睨みあっているに違いないと確信していた。
だって俺はガーデンが滅んでしまえとか、自分の家系が大嫌いだとか常日頃から思っていたから。
だから、天国から落してほしいときっと神様は閻魔にお願いをするんだ。
それの反対で、嫌がらせとして閻魔はあえて俺を天国に置かせようとしたりするんだ。
きっとあいつ等はそんな感じに違いないさ。俺だったらそうしそうだし。

だけど、目が覚めた瞬間に瞳に移ったのは真っ直ぐな<青>だった。
弱そうな感じだった。その<青>のお陰できっと天国にいられているんだろうなって。
きっとそうだ。じゃなきゃ、さっきまでの心臓の痛みが無くなっている訳が無い。

きっとこの青は<蒼>なんだろう。
深く、澄んでいて爽やかさを決して無くさない。俺が欲しかった色。
俺の瞳とは真逆な色。




-----いいなぁ・・・・・。

************



「あ、あの、起きてください。」

ん?
作品名:colors 作家名:HIRO