colors
01
結果として。
俺達2人は全くどうやってこの場所に入り込めたのか理解できないままだった。
もちろんこいつも。
「そういえばさ、僕達名乗ってなかったね。」
「そういえば。」
さっきから色々と話し合っている訳だし、一応言っておくべきなのか。もう護のほうは言う気満々だし。
「じゃぁ、自己紹介。しますか。」
「僕、兄貴の弟の沢渡護です。宜しく。」
順番的に俺の番になった。
「改めて、俺、護の兄の沢渡攻。双子だ。」
「どうりで無駄に似ていると思った。」
無駄とはなんだ無駄とは。こいつ失礼じゃないのか?
「俺は五月雨真白。ここの住人だ。」
真白。ましろ。まっしろ。
つい護と顔を見合わせてしまった。
「「名前負け??」」
「貴様等・・・・!!!」
あ、何か。お互い様な気がする。前言撤回を心の中で直ぐにしておいた。
というか、さっきから思っていたけど真白って見た目とか、緋色とか余り関係なく普通に面白い奴なんだなって思った。
彼自身は余り好意を表現しているわけではないみたいだけど。
それに護ほどの推測力も持ち合わせていないから俺の思い違いの可能性も馬鹿にできないが。
普通に、良い奴だなって。
「真白、出来れば安全な場所を紹介してくれないか?」
「あ、真白。僕からも是非お願いしたいな。」
「・・・・!」
ん?
いきなり緋色を見開いた。どうした?
「あぁ。俺んちにくるか?」
「「うん。」」
直ぐに背を向けてスタスタと歩いていってしまった。はやっ!歩くのはやっ!!
「ちょ、はやいぞ!!」
*********
月明かりの激しい夜。何かに誘われるかのように外に散歩しにでた。
親には一言告げたから特には何も言われなかった。最近多くなった散歩。
夜風に当たるのも、夜出歩くのも嫌いではない。
このガーデンで一番静寂な時間帯。夜中。真夜中だ。短い針が真上を指していたのを先ほどみかけた。
-----月が一番見える場所に行こう。せっかくだしな。
そこで、変な人物二名を発見したのだ。
同じ顔。同じ背丈。同じ髪型。同じ・・・・。
ただ違うといえば、本人達は気がついていなかっただろうが瞳の色だった。発光していたのだ。
こんなに輝いているのはまれには、否、こいつら以外居ないんじゃないのか?
青と黄色。
自己紹介のときに判別できた。多分、攻が青で、護が黄色なんだろう。
落ち着いて話しているときにはもう光は収まっていて普段の色であろう茶色になっていた。
きっと言ったら驚くだろうから何も言わないことにした。
成り行きで何処に行くか困っているときに名前を呼ばれた。初めて同じ年くらいの奴に下の名前を呼ばれた。
正直驚いてしまって、何処か、嬉しかった。
------これこそ、本当に言えない。
最終的には、というか今現在俺の家に連れて行っている最中だ。
両サイドに沢渡兄弟。真ん中に俺。
なんとまぁ・・・。自分よりでかい2人に、しかも男に挟まれて歩くなんて夢にも思わなかったぞ。
そういえば、さきほど3人が居た場所に関してはこの兄弟に話しておいたのだ。
・・・・・・・・
「簡単に言えば、この場所は通称<ホール>だ。」
「「ほーる??」」
本当に同じ反応して面白いな。
絶対に言わないけれど。
「あぁ、天使が降りてくる場所だそうだ。降りてくる場所兼どこぞの輩が出入りするための道なんだと。」
「ほほう、俺らみたいなのか?」
「そういうことだ。」
実際天使が降りてきたかどうかなんて目じゃない。そういう迷信が命みたいなんだ。
宗教な人たちにとっては素晴らしい場所だ。ちょっとしたパワースポットでもある。
そのためにばかでかい樹も植えつけられている。そのせいで月とか星が隠れてしまっている辺りはきっと設計ミス。
「理解したか?」
「「うん。」」
頑張れ、笑うな俺。
・・・・・・・・
そんな感じで理解してくれた。
もう目の前には家の扉がある。中には電気が点いていた。まだ起きているらしい。
よるタイプな一家だという証拠だ。
「ただいま。」
「「御邪魔します。」」
家に入るなり、何故か父親、母親、それに妹も玄関に集合した。
皆ビックリした顔だ。
「あらあらまあまあ!!いらっしゃい。」
「2人もゲットしてきたのか。」
「お兄ちゃんのお友達??」
上から、母、父、妹の梓。
一気に言うんじゃないよ・・・。
「こんばんは、真白の友達の沢渡攻です。」
「こんばんは、真白の友達の沢渡護です。攻の弟です。あと双子です。」
友達・・・。
「「「「「じーん。」」」」」
なんだ・・・っ!!
いきなり5人に攻められた感は・・・・。
攻められたとかいじめじゃないけど、なんかむず痒い感じにあっぱくされた?否、言葉に出来ない。
出来ないものは出来ないままにしておこうか。今のままじゃ収拾つかない感じだ。
「俺は何も思ってないからな、とゆうか早く部屋に入れさせてやれ。寒い。」
「あら、そういえば玄関でなんて。ささご兄弟お入りなさいな。」
やっと気付くとか、もっと来客だって言う意識を持ってもらいたい。
せっかく連れてきたんだから、もっとこう、さ。うまい具合に。
「お兄ちゃん。」
廊下を歩いてリビングに向かおうとしている時に最後尾の梓に服の裾を引っ張られた。
梓のほうが背が低いから下から見上げている感じになるのはどうしょうも無い事だ。
「ん?」
「私も、いつか、友達っていうのを連れてこられたら良いなって思ったの。」
----。
そういえば、こいつもそうだよな。
中等部だって高等部とはさほど変わらない状況だ。どっちかといえば、こいつも俺と似たような外れている奴だ。
気持ちも分かる。梓は俺よりは人間関係が美味いほうだからいるっちゃいるが、固定したのはいない。
所謂、上辺友達。
連れてきた事は、無いな。話も、そこまで聞いた事はないな。
「そうだな。俺もさ正直あの兄弟はまだ友達って言う認識は無いんだよ。まだ数分しか話した事がないし。」
「そうなの??」
「あぁ、さっき会ったばかりだ。」
凄く驚いた顔をしている。それもそのはずだ。一番驚いているのは、多分俺だ。
「時間って関係ないんだなって思った。」
「・・・。」
「それとな、初めて家族以外に下のほうの名前を呼ばれたんだ。」
「そっか。」
そんな顔をしないでくれ。きっと、梓にもその内できるさ。自分から好きになったことなんて全く無いけど。
あいつらだって、いつかは俺の元から離れるんだ。
今日だけの、夢物語なんじゃないのかなって、俺はそう思っている。
<絶対にそのことは言ってやらないけど。>
こいつの顔はきっと俺が明日から受け継ぐ事になるのだろうなって。
そう思うと憂鬱になるけど、でも証明できるのなら。彼女が笑ってくれるのなら。
「まぁ、気楽にいこう。」
「うん。」
冷たい廊下。靴下を履いていても足の裏は冷たいままだ。
まるで俺の今の心のように。靴下っていう壁があって、足の裏っていう本心がいつまでも隠れているんだ。
弱虫な俺は何時までも誰にも話せないままなんだ。
リビングに入ると、沢渡御兄弟はお母さんの入れたココアを飲んでいた。