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「舞台裏の仲間たち」 59

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 「たいしたことはないって。
 たまたま、おじいちゃんが福建省からここへ来て、
 成功をした時に手に入れただけだもの。
 パパは仕事の都合で、市内の新築マンションに住んでいるし、
 ママも時々、私に会いに帰ってくるだけよ。
 ここに残っているものは、建物と同様にただの過去の遺物だけ。
 それでよければさあ、どうぞ」
 
 
 貞園が先にたって歩き始めた建物本体の内部には、
中庭を中心に、門に向かった正面に先祖を祀る廟があり、
左右には翼にひろげたように書斎や寝室など生活のための部屋が、
合計で34部屋がつらなっています。
建物内は窓がほとんど無いため昼でも薄暗いのですが、
天井が高いおかげで圧迫感は感じません。
直射日光が入らないおかげで、夏でも涼しく、また冬も暖かいそうです。


 一部屋ごとの面積は四畳半程度で、
主寝室などはベットと鏡台を置いただけで、もう満杯といった感じです。
これは一部屋一部屋を小さくすることにより、壁の数を多くして、
屋根を支えるという効果を産んでいます。

 壁やドアのいたるところに龍や鳳凰、
桃や蓮の花といった縁起の良い模様が描かれたり、彫刻がなされていて、
これには先祖を敬うという意味もあるそうです。
それを丁寧に見ていくだけでも、時間があっという間に過ぎてしまいます。


 「大富豪で資産家の娘だったんだ、貞園は。
 なるほどね、それで、どこかに育ちの良さがあったわけだ・・・・
 最後になって、やっといまごろ納得だ」

 「今頃になってなにを納得しているわけ。
 満開になったお花は大好きだけど、私みたいにまだまだ中途半端で、
 蕾のままの小娘なんか、少しも眼中にないくせに。
 さぁ、行くわよ」


 すでにスクーターの後部座席では、
ヘルメットをかぶって笑顔の貞園が待機をしています。
台北のはずれから、中正国際空港までは50分ほどかかります。
飛行機の予約が午後3時過ぎということもあり、比較的すいていた道路を
いつものように貞園と二人乗りで、最後のスクーターを飛ばしました。
出発ロビーで航空会社カウンターに荷物を預け搭乗手続きを済ませると
搭乗までは2時間ほどの余裕が残っています。