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コメディ・ラブ

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考えたくないのに



窓は全開だけれども、風は全く入ってこない。

熱気がどんどん校長室に溜まっていく。

「だから、美香先生の教え方が悪いからうちのよっちゃん、算数が苦手になったんです!」

よっちゃんのお母さんがさらに熱気を発している。

「確かにうちの山村も至らない点も多いかと思います。なのでそれをフォローして頂くため、宿題をきっちりやらせて下さい」

校長先生も負けずに頑張っている。

私は何故だか違うことをずっと考えていた。

「わからないから、宿題やらないんです!よっちゃんが怠けてるとかじゃなくてね」

そこから先はよく覚えていない。




夜の誰もいない教室でテストの採点をしていたが一向にはかどらなかった。

仕事も段々とおろそかになってきている。

本当に私はどうしようもない。

目をつぶり天井を見る。

「3.1415………」

いい感じ。何にも考えられない。心が落ち着いて行く。

円周率を唱えれば無にたどり着けることを昨日風呂場で発見した。

円周率ってメロディつけたら、良さそうじゃない。

どうでもいいことを思いついた。

迷子の子猫ちゃんに合わせて歌ってみる。

「3.1415〜♪」

意外にいいんじゃない?

気分がよくなってくる。

「これyoutubeeにアップしたら流行ったりして。」

「流行るわけねえだろ!」

いきなり声をかけられて私は椅子から落ちて狼狽した。

窓の方を見るとあいつがいた。

「……い、いつからそこに」

「最初からだよ最初から」

あいつはこ馬鹿にしたように笑う。

「……なにしにきたの」

「何しにって、おれのかぼちゃちゃんの様子見にきたんだよ!」

といい、あいつは花壇のほうへ歩いていく

数歩進んだ所で

「おい、美香、お前も来いよ」

あいつが言う。

「ああ」

私は返事をした。美香っていつの間に呼び捨てに呼んでんだよ。

何だか恥ずかしくてあいつの顔が見られない。

「何さまだって」

「ちょっと呼び捨てって……」

「なれなしくしないでよ。」

「最初は虫食い女とか言ってたくせに。」

「美香って呼び捨てで呼ぶなんて気持ち悪い」

なんて裏腹な文句を心の中だけで思いながら私は、晃の後ろをついていく

「かぼちゃちゃんまた少し大きくなってるな」

あいつが言う。

「うん」

晃は突然私の顔を見つめ言う。

「お前……さっきから何ニヤニヤしてんだよ。気持ちわりいな」

この一言で私は我に返った。

本当に私どうかしてる。

……あと一週間で東京に帰るんだから。

今日はトニーで佐和子とてっちゃんが飲もうって言ってた。

もう帰ろう。

私はかぼちゃを愛しそうになでている晃に言った。

「ごめん。もう帰るわ。今日用事があるから……」

「……あっ……そう」

あいつがちょっと不機嫌そうに言う。

「じゃあね」

そう言い残してその場を離れる。

「ちょっと待てよ」

あいつがそう言い私の腕を掴む。

私は驚いて晃を見つめた。



作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko