コメディ・ラブ
川
自分の全てが嫌い、仕事も辞めて自由になりたい、明日にはもうやめちゃおうか。
こんな村出て行こうか、
給料は安いし、ストレス多いし、残業代だって出ない。
川岸の大きな石の上に座りながら、大きくため息をついた。
綺麗な月明かりが石を照らしている。
今日も星空はとても綺麗だ。
別にいいじゃん。考えるのは自由でしょ。
もう一人の自分に言う。
明日にはちゃんと仕事行くから許してよ、今日ぐらい。
石の上に思いっきり寝ころんで背伸びをした。
そういえば昔ここにてっちゃんとよく来たな。
あの頃、朝から晩まで暇さえあれば二人で石投げの練習してたな。
懐かしい。
そうだ。ここであいつとも出会ったんじゃん。
あいつ私のことお母さんって呼びやがって……
今日もかぼちゃ見に来てるだろうな。
あいつにはこんなみっともない姿は見せられない。
明日も頑張ろう。
大きく息を吐き、立ち上がり石を思いっきり投げてみた。
俺は言われた通りに細い道を歩いていくと、一人で川辺に座っているあいつを見つけた。
声をかけようとしたが、あいつが泣いてるのに気付き、その場に立ち尽くした。
30分ぐらい、俺はあいつを見ていた。
あいつが急に立ち上がり石を川に向かって投げた。
石は2回跳ねただけですぐ落ちた。
意外にこういうのは下手なんだな。
俺はあいつの少し後ろから石を投げた。
石は6回跳ね、綺麗に川に沈んだ。
あいつが驚いて後ろを振り向く。
はずだった。
俺は石を投げようとした瞬間に足を滑らせ、藪の方に投げてしまった。
次の瞬間、藪の中にいる虫という虫すべてが出てきて俺に襲いかかった。
「ひぃい。助けて〜」
生まれも育ちも東京23区で、虫とは縁遠いおしゃれな俺は思わず叫び声をあげ、尻もちをつく。
「何してんだよ!」
最悪のタイミングで俺に気付いた。
「む、虫の研究だよ。今度のロケで虫のドラマとるからな」
自分でも意味不明だと思う。
あいつが怪訝な顔でこっちを見ている。
「というのは嘘で……たまたま通りかかってさ。あれ、どうしたの?泣いてるの?」
「……別に関係ないじゃん」
衝撃の言葉を聞いた。
川の流れる音が耳に聞つく。
あいつの言葉は無視することにして、無理やりあいつの隣に座ってやった。
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko