コメディ・ラブ
俺は病気
はっきり断ったのに、晃は隣に何故か座る。
「だから聞こえなかったの」
晃は急に真剣な面持ちになった。
「いいか、よくきけ、俺はな……生まれつき……泣いている女の人をほっとけない病気があるんだ。」
こいつは何を言い出すんだろう。
「ほっておいたら俺は心が痛んで死ぬ。そしたらなお前は全国民からな罵倒されてな」
本当にこいつは優しさも言い訳も何もかも大げさだ。
「……わかったって。いたきゃいればいいでしょ」
あいつは嬉しそうに笑った。
「……どうした?なんかあった?」
月明かりに照らされた、藪を見ながら答えた。
「まぁちょっとね」
「今日保護者のおばさんたちがごにゃごにゃ勝手なこと言ってたぞ。」
どうして人が触れて欲しくない所に触れてくるんだろう。
「……聞いたの?」
「……自分の子どもなのに、なんでも学校のせいにして」。、
「そう」
一言だけ答えて、川に石を投げる。
石は今度はうまく4回ぐらい跳ねて沈んでいった。
「本当にむかつくんだよね。子どもと向き合うことから逃げてる。でも……昼間はずっと私と一緒にいるんだよ。」
「それが?」
晃が聞き返す。
「私が人の痛みをわからせてあげられてないから、こうなるんだよな。」
また川に石を投げる。
石は1回も跳ねずにすぐに沈んだ。
晃はだまって何も言わなかった。
そうだよ。何も言わない方が楽だ。
「……そうだ。ちょっと来い」
あいつが思いついたように立ち上がる。
手を強引に引っ張られる。
「ちょっとどこ行くんだよ」
あいつに連れられて徒歩10分。
なんだか山の上を登らされている。
急にあいつが止まった。
「ほら見てみろ」
あいつが指さす先には麓の街の夜景が綺麗に輝いていた。
「すごい綺麗……」
思わず声が出た。
あいつが得意げにうなづく。
「どうして村人の私も知らないような、こんな場所知ってんだよ」
「……神様が俺に与えてくれた一番の才能は……役者じゃない。」
「えっ」
「女の人が喜ぶものを見つけることなんだ」
あいつがあまりにも自信たっぷりに答えるから思わず笑ってしまった。
「やっと笑ったな。俺のおかげだ」
本当に優しさも自信もおかしさも大げさな男だ。
「……別にあんたなんかいなくたって笑えてたって」
なんだか恥ずかしくなってわざと言う。
「お前本当にかわいくねえな。普通の女はなこういうときはありがとうって涙目でいうんだよ。」
「そんな女いねえよ」
私がぶっきらぼうに答えた。
「もう帰るぞ」
あいつが先に歩きだす。
何故だかこの一言を言ったらもう自分が終わりのような気がする。
けれど言ってしまった。
「……さんきゅ」
晃は足をとめて後ろを振り返った
晃と目があった瞬間に嫌な予感がした。
胸が高鳴っている
どうしよう。
「だから言ったのに。」
もう一人の自分が心の中でつぶやく。
けれども私はどうしても晃から目をそらせなかった。
その時だった。
「うわっ!!」
優海ちゃんが木陰から急に飛び出してきた
私も晃も相当驚いている。
「……どうしたの。優海ちゃん?」
「ちょっと……通りがかりに二人を見つけたから……脅かしてみようかなんて思って」
優海ちゃんは無邪気に答える。
「晃さん暗いから一緒に旅館まで帰りましょう」
優海ちゃんは強引に晃の腕を組む。
「じゃあ美香先生これで」
私は答える。
「……じゃあ」
優海は強引に晃を連れていく
優海、晃さんとお星様見に行こうって約束したから晃さん探してたのに。
晃さん美香先生を探してた。
いきなり腕引っ張って山に連れていくから
二人で山の上で喧嘩でもするのかと思って心配してたのに
そういうわけじゃなかった。
「まさかね……」
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko