コメディ・ラブ
俺は決して……
布団に寝ころび、自分が出ている雑誌をチェックしていた。
「これ、髪形がイマイチだ」
そう呟いてはみたものの、どうしてもひっかかっていることがある。
雑誌を自分の顔にかぶせ手軽に暗闇を作り出す。
「別に俺がいたってな……」
独り言をわざと大声で言いながら、テレビをつけても音楽をかけても落ち着かない。
その時、俺は心が躍る言葉を見つけた。
「あいつには借りがあるんだから、ここで何かして返しとかないと大変なことになる」
サインを100枚頼まれるかもしれないし、200枚ぐらいかも。
学校へいってみたけれど、明かり一つついていない。
あいつのアパートにも行ってみたがいない。
どこにいるんだろう……
何故かあいつに怒りにも似た感情を覚えた。
「いつものように、かぼちゃちゃんの所にいろよ!」
傍にあった信号機を思いっきり蹴った。
「いてぇ。ああっ。いてえ。」
足を少し引きずりながら、目的もなく道路を歩いていた。
ふと顔をあげると、遠くからカップルが歩いてくる。
中年風の男がやけに若い女に絡み付いている。
「僕タン、あなたの犬になります」
大声で宣言している。
そういうことは家でやってくれればいいのに。
しかし、なんだか見覚えがある背格好だ……
近づいてくるにつれて、段々と姿がはっきりしてくる。
「……監督!」
監督も俺に気がついた。
監督と俺の間に気まずい時間が流れる。
「晃さん!」
横にいた女性に声をかけられた。
最初はファンかと思い顔を作ったが、どこかで見覚えがある。
「佐和子先生!」
確か、あいつの友人だったはず。
「晃さんこんな所で何してるの?」
監督がロボットの様に動きながら言う。
「あ、あ、ああ晃君、ここで何してるの?」。
監督のことは正直どうでもよかった。
「……佐和子先生……美香はどこにいる?」
佐和子先生が少し笑って答えた。
「今は一人にしておいたほうがいいんじゃないかしら」
「俺はあいつのこと心配してるわけではなく、勿論女として見てるわけではなく、ただ単純に借りを返したいだけなんだよ」
俺はこんなに下手くそな台詞が脚本にあったら激怒する。
佐和子先生は俺も知らないすべてを見越したような笑顔で答えた。
「川に行くといると思うわ」
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko