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夢をつなぐ

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「は、はぁ、ありがとうございます。 ……でもそれって、言ったら意味ないのでは?」

「おーい!○○。 インタビュアーのねぇちゃん困ってんだろうがー!! ちょっとかっこいいからってナンパしてんじゃねぇ、俺とかわれー!!」

「かっこつけんじゃねー、○○! いつものお前は違うだろーがー!!」

「お前は紳士じゃねぇだロー!! 変態だローがー!!」

「サポーターの皆さん、応援ありがトー!! 後変態って言ったやつ、よく言ったーー!!」

「……えー、サポーターとも仲がよく、人気の高い○○選手ですが、最後に今日の試合を観戦していた方々、そして日本の方々にメッセージを」

「まぁ、仲良くないし、人気ないんですけど」

「それ自分でいっちゃうんですか!?」

「……でも、まじめな話をすると今日の試合だってまだまだなんですよ、勝ちましたけど課題はたくさんあります。
フォワードのトップの位置の自分が中盤まで顔を出す、数的優位を作れるという意味でも捉えられますが、違う言い方をすれば自分の動きが悪くて、中盤まで下がらざるをえないとも取れる。
自分がもっとチーム全体のディフェンスのポジションを考えて、プレスをかけていれば失点、もとい得点だってもっとできたかもしれない。
さっき言ってた、自分が決めたゴールシーン、あれを決められたからいいものの、はずしていればスタメン落ち
、ベンチ外、戦力外通告だってありえる。
自分たちに完璧なんてない、常に上を目指さなくちゃいけない、自分がプレーできているのは当然なのではなくて、いつも生き残りをかけて、そこで勝てているから。
プロって言うのはシビアなんです、とても過酷で、何事にも真剣で。
それを日本で、このスタジアムやテレビを通して、日本の皆さんにお見せできたのは非常に大きいし、僕にとってとてもうれしいことなんです。

単純に日本サッカー界にとって、今日の試合は大きな収穫だったろうし、世界の大きさ、凄さを皆さんに肌で感じてもらえた。
何より、夢を目指している人たちの意識が変わるはずです。
今日のニマウド選手やエイマール選手のプレーを見て、サッカーをやりたい、プロを目指したいという子が出てくるはずです。
でも単純に”なりたい”、”目指す”ではなく、厳しい、難しい、辛いといったイメージがわいたはずです。
どの程度で厳しいと感じるかは自分しだいだけど、”厳しいけどプロになりたいからがんばる”って言う気持ちを少しでも持ってくれたら、僕はうれしい、今日本に足りないのはそういう気持ちなんです。
僕は”プロは甘くない、軽い気持ちで目指すな”なんていいません。 むしろ逆です、どんどん目指してください。 男子も女子も関係なく、ね。
歓迎しますよ、そのときはプロとして、ね」

「ありがとうございました、以上、MVP、○○選手でした……あの、もしよろしければサインとか連絡先とか」

「あぁ、いいですよ」

「うらやましいぞ、チキショー!! リア充がー!!」

「でもよかったぞー!! お前は最高だー!!」

「がんばれよー!! インタビューかっこよかったぞー!!」

「また日本に帰ってこいよー!! 俺たちも歓迎するぞー!! 日本代表としてなー!!」


 私はその日サッカーに出会い、お兄ちゃんに出会い、そして思った、あのお兄ちゃんみたいになりたいと。
 プロを目指したいと。

        


          ✩ ✩ 七年後・渡会春菜(わたらいはるな) ✩ ✩

 私が始めてサッカーの試合を見に行って、あのお兄ちゃんを追いかけ始めてから七年という月日が経った。
 あの試合で私は重大なミスをしてしまった。
 お兄ちゃんの名前を、家族に尋ねるのを忘れてしまったのだ。 
 それ以来、私は幾度もサッカーの試合をテレビで見たり、雑誌などを読んだりして探しては見たものの見つからず終い。

 親に聞くという方法を十歳の頃に考え付いたものの、チーム名や肝心なキーワードが思いつかなかったために、それも行動せずに終わってしまった。

 ……聞いても無駄だったかも。お父さんに聞こうにも、お父さんは日本のリーグや代表戦、海外の試合を年に百試合くらい見てるって言ってたから、あのときの試合で日本人だった選手って誰?、って聞いても今じゃ日本人も世界に出る時代。
 おそらく特定は難しいと思う。 五年前ということも考えてもね。

 そういえばあの試合のとき、サポーターから日本代表として迎えるといわれていたけれど、どうなったのだろう?
 そのすぐ後にあった代表戦では、お兄ちゃんの姿はベンチにすらなかったし。

 何はともあれ、私はあの試合を見た日からお兄ちゃんの姿を、私の中にあるおにいちゃんの動きのイメージを追いかけ、日々練習に励んだ。
 お父さんに教えてもらったり、男の子に混じって練習したり、一人でボールを蹴ったり。

 そしてサッカーを始めて七年、私、渡会春菜(わたらいはるな)は中学生になった。
 かつて有名な女子サッカー選手を生んだ名門校、白鴎(はくおう)女学院に入学することを決めた。
 まだまだ下手くそだけど、私はこれからだ。
 これから三年間、この名門校で頑張って、日本一、いや世界一のプレーヤーになってみせるんだ。

       ☆ ☆  神堂(しんどう) 祐志(ゆうし) ☆ ☆

 俺の名前は神堂祐志。
 去年大学を卒業し、今年から社会人になった新米だ。
 そこまでまじめに授業を受けた覚えなどなく、学校生活や勉強はもちろんのこと、体育祭や 文化祭ですら記憶にないほど。そんな俺でも留年することなく、こうして二十二歳で社会に出ることができた。
 働くって何するかって? ろくに学校にも通って無かった俺が、奇跡的になれた職業はなんと、中学の体育教師だったんだよ。
 まぁ、もともと運動神経はいいっていわれてはいたし、大きな怪我をしたとはいえ動けなくなったわけじゃないし、長い時間動かさなければ全力でダッシュすることだって可能だし、人に教えることは苦手だが身体動かすことに関しちゃ、教えるどうこうより実践して教えるほうが解りやすいからな。

 これも雇ってくれた学院長のクー姉に感謝だな。
 ……まぁ、なにはともあれ中学教師として、今日から働けるようになった。
 ……なったんだが。

「では神堂先生、あなたには予定通り我が学院のサッカー部監督をやってもらいますよ」

 あれ?なんでこうなってんだ?
 うきうき気分でスキップしながら登校した俺だったが、いきなりといっていいほどのタイミングで会議室に呼び出されてしまった。
 そして今に至る。
 コの字型の机に座っている、この白欧女学院のお偉いさん方七人くらいに囲まれている状況。

 ……なんだこれ? 俺なんか悪いことしたのか?
 むしろこういうもんなのか? 雇ってもらうって。
 だがサッカー部の監督? 予定通りも何も、俺は体育教師として雇うとしか聞いてねぇぞ? しかも女学院ってことすら知らなかったんだが。

「我が学院のサッカー部は現在部員がいない、つまり神堂先生には部員集めからはじめてもらう」
作品名:夢をつなぐ 作家名:・恋・