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草薙教授の人間学講座

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「恋愛においては、切り捨てる イコール別れるという事になる
という事ですか?
別れる だと普通に聞こえるけど、切り捨てるっていうと
凄く酷い事に聞こえるなぁ」

「本田くんは、いったいどれだけに女性を切り捨てて来たのかな?」

「僕は、切り捨てたりしてないですよ
どちらかと言えば、切り捨てられた事の方が
多かったと思います」

「それは、私と同じだね
ん?澤田さん その笑いはいったい何かな?」

「いえ、教授も切り捨てて来た事の方が多いように
感じていたので」

「それは私がモテただろうと想像してくれていたのかな?
それはとても光栄だけれども、たいしてモテてはいなかったんだなぁ

これでも意外と本の虫でね
学ぶ事を嫌だと感じた事が殆ど無かったという
きっと君たちには理解し難い学生時代を送ったものだから
女性と過ごす時間は余り無かったんだよ

そういう点では、奥さんだった人は、とても奇特な人だったと
言えると思うよ

さて、生きて行く上で、誰とも交流を持たずに過ごすという事は
まず不可能だと言えます
まぁ、インターネットを介して収入を得て
宅配なんかで食材や衣類等を購入し、訪問販売等を無視すれば
誰とも顔を合わさずに生きて行く事も可能だという
ある意味便利な世の中ではありますが
それでも、普通に生活をするならば、必ず他人と交わらない訳にはいきません

そんな関わりの中で、人と付き合う術を身に付けたり
自分の得意な物や苦手なものを見つけたり
長所や短所にも気がついたりする
人と交わる事は、自分を成長させる事にも繋がるものだけれど

恋愛というものに於いては、なかなかそうはいかない
道徳心やマナーというものは、どんな関係に於いても必要だけれど
不思議に恋愛というものの前では、理性や道徳心といったもの
自制心というものですら、人は失ってしまう事があります

それ程の麻薬的な効果が、恋愛にはあると言えるのではないでしょうか

けれど、それだけに本当の相手の姿が見えていなかったり
本来の自分を見失ってしまったり
本当に自分にとって大切な人を、見過ごしてしまっていたり
そういった事も起こってしまうのです」

「自分にとって、本当に必要な人とは、どんな人ですか?」

「それこそは、それぞれの価値観によって違って来ると思いますよ
相田さん

自分にとって何が一番大事なのか
お金であったり、家族であったり、仕事であったり
様々な周囲の環境の違いや、生きてきた上で身に付けたもの
そんなものが人の価値観を作り上げて行きます
価値観とは、何に重きを置くかという事だと言えると思いますが
その価値観の違いによって、別れる男女も少なくは無いでしょう
けれど、価値観が全く同じという人たちが出会う確率とは
いったいどれだけあるのでしょうか?

育って来た経緯や環境が違えば、価値観など違ってあたりまえです
価値観が違うからこそ、喧嘩をしたり腹を立てるものです
そんな中で、互いを理解しあえる、成長させられる
そんな人に出会えたならば、それはとても大切な人と言えるでしょうね

そうでなくても、互いに何らかの役に立たないとしても
お互いを必要と思える相手であれば、大切な人と言えると思います

人の感情というものは、とても複雑です
言葉として発する事が、本当に真実だとは限らない
相手を理解していると思っていても、実はそうではない
人と言うのは、自分本来の姿を隠す事も得意だからです

悲しいと感じていても、笑う事が出来る
腹を立てていても、笑顔で居られる
辛い事があっても、平気なふりをする事が出来る

そうすると、その人の本当の心を見過ごしてしまう事も
多々あるでしょう

友達というのは、価値観の近い人同士が仲良くなるものでしょう
そうでなければ楽しくはありません
けれど、恋愛というものに置き換えると、価値観というものは
それほど重要視するものなのか
その点は疑問に思います

出会って付き合い始める段階で、ある程度価値観は近いと思えます
でなければ、一緒に過ごす事は困難でしょう
互いの違いを埋める為に、最初から何らかの努力が必要になります

そんな努力をいつまでも続けるのは難しい

お互いを必要と感じているならば、価値観と言うものは
それほど重要な事では無いと私は思います
皆さんはまだ若い
ある程度年齢を重ねた方もおられますが、若いみんなには
それほどそんな経験は無いと思いますが
年を重ね、色んな恋愛を重ねて行くと
ふと思う事がある方も居ると思うんです

何年経っても、心の中に消えずに居る存在

そういった人も、その人にとっては
本当に大切にすべき人だったのではないでしょうか」

「教授にも、そんな人が居るんですか?」

「残念ながら、私には居ないんですよ 佐田くん
けれどもし居たとしたなら、きっと懐かしいでしょうね」
作品名:草薙教授の人間学講座 作家名:fool