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草薙教授の人間学講座

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「私の好きな小説の一説に

何かの役に立つという事を抜きにして
僕達がお互いに必要としあう仲になれたとしたら
どんなにいいことだろう

という一文があります」

「それって、落穂拾いですよね」

「おっ 知ってるんですか?森田さん」

「はい 読んだ事があります
私もその文章には、とても心を惹かれました
もしかして教授、人妻に恋した事があるんですか?」

「鋭いツッコミをしてくれますね・・・
まぁ、もうかなり昔の事なので、淡い思い出というとこですが
若かりし頃、美しい女性に心を奪われました
想えば、幼い頃に母を亡くしているので
若干、マザコンが入っていたかも知れませんが

そこ、片山くん
ウケ過ぎ」

「すみません
教授も、隣の佐田と同じで、年上キラーだったのかと思いまして」

「いやいや、残念ながら私の淡い恋は、片思いで終わったよ
まぁまぁ、佐田くん そう怒らないで
片山くんは事実を言っただけなんだろうから」

「教授、それは誤解です
僕は、愛には国境も婚姻関係も最終的には無意味だと思っているだけの
純粋な男です
単に、好きになった人が誰かの奥さんだったって事があっただけですから」

「わかりました
そういう事にしておきましょう

話を戻しますが

何かの役に立つという事を抜きにして
僕達がお互いに必要としあう仲になれたとしたら
どんなにいいことだろう

この言葉の中にあるものこそ
これぞ愛情の真骨頂ではないかと私は思います
人間同士の関係に於いて、利害関係や打算というものは
ある程度存在します
恋愛に於いてもそれはある程度存在します
ましてや、結婚というものを真剣に考えれば、生活という
目の前に突きつけられる現実に思いを巡らせると
打算的にもなります

けれど、もし、見返りを求めず求められる事も無く
ただ相手の存在だけを求める事が出来たなら
それは素晴らしい関係だと思います

私は、または僕は 純粋に相手を求めている と感じていたとしても
性的関係に重点を置いている事は多いし
それも相手を自分の役に立てているという事だと思いませんか?」


「そう言われてしまうと、そうなのかもって思えます」

「ありがとう、片山くん

家族という、特に親子という関係の中では、いくら自分の役に立たない
からといって、その関係を解消する事はまずありません
確かに、親子という血縁の関係であっても、その間柄が希薄になっているのも事実だと認めざるを得ない現実もあるにはありますが
一般的にはそうではないと言える筈です

けれど、それ以外の関係では自分の役に立たなければ
関係を切り捨てる事もあるという事です」

作品名:草薙教授の人間学講座 作家名:fool