草薙教授の人間学講座
「さて、みなさんおはよう
おっ、なかなか元気な返事が返って来ましたね
前回の講義で最後に言ったように、今日は必要なもの
必要で無いものという結果から進めて行きたいと思います
必要なもの・・・
お金という現実的な答えから
家族、友人、友情といった人間関係にまつわる答え
空気、衣食住という本当に無くては困る極当たり前の答えや
そして、愛
この愛というものに関しては、必要で無いものの中に
恋愛というものが含まれ
必要なものの中にも、恋愛が含まれていると言う
真逆の答えが存在します
実に、面白い
自分が何を必要としているのか
現時点で必要とするものを考えた場合と
生きて行く上で欠かせないものを、必要なものと考えた
二通りの答えが出たという感じですね
ならば、欠かせないものを答えた人は、その他の事は
満たされているという事なのでしょうか?
それとも、本当に必要ないと考えたのか」
「教授はどういった答えを求めてアンケートしたんですか?」
「やぁ、松井くん 久しぶりに私の講義に出席してくれたね」
「ちょっと色々忙しかったもので・・・」
「何に忙しかったのかは、つっこまないでおくよ
松井くんは、何を必要と書いたのかな?
差支えなければ教えてくれるかい?」
「愛です」
「ほー 何故か周囲で笑いが起こっているんだが
その真面目そうな表情が怪しいと
私と同じように思った人が居るという事だなー
私は、テーマを与えて自由に作文を書くのと同じように
求めた答えは無いんだよ
自由な発想で答えて欲しいと思っただけなんだ
生きる上で必要なものは、万人に共通していると思う
健康という答えがあったように、健康でなければ
問題なく人生を謳歌する事は難しいだろう
食べ物を食べて、息をして、快適に住む場所は必要だ
更に快適に生きる為には、お金は必要不可欠だし
少しでも多くのお金を手にして、より快適に生きるという目的で
仕事に励む人も少なくは無い
さて、ではそれ以外の答え
愛、恋愛 という所に目を向けてみよう
愛といっても、そこには親子の愛、兄妹愛といった
切っても切れない間柄の中に存在するものや
動物に対する愛というのもあるだろう
時には無機質な物に対して愛を抱く人も居れば
架空の存在に対して愛情を抱く人も居るだろう
そして、愛というものは、数学や物理学のように
何かでその存在を測ったり確認出来るものではない
人の中に存在するその感情は、人それぞれの価値観の上に成り立ち
その大きさを比べる事など出来ないものでもある」
「教授は、何に愛情を感じてますか?」
「私かい?それは君たち学生に対してだよ 勿論
嘘くさいと思ったと、顔に書いてあるよ松井くん
君にそう思われるというのは、とても心外なんだが
それは受け流すとして」
「いえ、僕が一番大事だと思っているのは愛ですから
教授の言葉が嘘だなんて決して思っていません」
「そこまで言うと本当に嘘くさいからやめてくれ・・・
ほら、周りもそう思っているから笑ってるんだよ
まぁ、私に子供が居れば、きっと子供に対する愛情だと
答えたと思うんだが、居ないからね
恋愛という分野となると、大してその知識は実地で培われていないから
それこそ嘘くさい話になるので
ボロが出ない程度に話してみたいと思う
人が生きる上で、誰かとの関わりを持たずに生きる事など不可能ですよね
家族というものが、人の人生の根底にあって
その関わりの中で、愛情や思いやり、道徳心などを培って行くと言っても
過言では無いと思います
作品名:草薙教授の人間学講座 作家名:fool