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草薙教授の人間学講座

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「尊厳死というものは、あって然るべきという事ですか?」

「そうですねぇ・・・然るべきとは考えません
けれど、人は自ら死を選んだ場合、それを自殺としか捉えません
それを助けたとすれば、自殺幇助として罪に問われると聞きます
それらを良しとしてしまえば、秩序が失われてしまうという懸念
もあるから、どんな状況であったとしても
許すべきでないという考え方も理解出来ます

これは色んな状況にあてはまると言えます
全ての人が秩序と公正さ、冷静な判断力で
あらゆる事を考える事が出来れば、犯罪さえも起こらないかも知れない

しかし、それは理想論としか言えないのです」

「じゃぁ、自分の余命や置かれた状況によって
その人が死ぬ事が一番良い選択だと考えた時は
そういう選択が出来る世の中であるべきだと教授は考えますか?」

「鋭い質問をありがとう
松井くん

それが全ての人にあてはまるとは考えていません
ただ、私自身は、自分の寿命は自分で決めたいと思いますよ

それでも、自分がいざ死に直面した時
それが突然の事故や災害という突発的なもので無い限り
実際に自分がどう感じるかは想像も出来ません

あらゆるものを駆使して、助かりたいと感じるかも知れない

そういった人間の複雑な感情の前では、生命倫理などというものは
無に帰してしまう可能性は高いと思います
そのうち、SF映画の題材になりそうな
自分の臓器移植の為にクローンを作り出してしまうかも知れない

食糧難も、牛や豚をクローンで増やして
危機を乗り切ろうとするかも知れない

そんな時代がやって来たとしたなら、きっと
生命倫理の基準も、大きく変わって行くでしょう
そんな流動的なものの中に、正しい答えなど結局は見つからない

最終的に私は、学生諸君の心の隅に今日の内容が
少しでも残り続け、いずれ自分が判断するべき立場に立った時
より良い選択をしてくれたら・・・と願うばかりです」

作品名:草薙教授の人間学講座 作家名:fool