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シンクロニシティ

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 モンストラス世界の管轄である鈴村の肉体を奪い、加藤の館が爆発したデジャヴュ後も加藤としての存在を隠して、鈴村として活動していた加藤達哉。

 繰り返される惑星の破滅や破壊の対象となった生まれ故郷のモンストラス世界。その世界がまやかしであり、それを作り出したシンギュラリティ世界もまやかしであると伝えてきたEARTH。何度も人間の進化を見続けて、何度もそれを価値がないものと判断させられてきたEARTHは、それを終わらせる者を探していた。それが加藤達哉。それは、その現場を見る全ての者、本体の鈴村を含めて、皆、認識する。

---*---



「俺のRの肉体とエクスチェンジしていたのか。加藤達哉」



【ミッション-開始-目標-S春日雄二-R加藤達哉】



 シンクロでEARTHのすぐ目の前に現れる刈谷。その姿を目に止める事ができた本体の桜。



「恭介!!」



 パフォームの刈谷はEARTHの右腕と頭を鷲掴みしながらミッションを遂行する。



【電力-放射-10000Vボルト-5Aアンペア】



 黄金色に輝く刈谷の両手。人間であれば確実に生きられない電流が流される。



「俺がRと同じ周波数や! 人間に有効な電力や! 物理的な攻撃で死ぬとでも思ったか!!」



 電力をまともに受けても変化のないEARTH。そのEARTHはまだ刀剣を胸に刺したまま、刈谷の肩をつかみ、パフォームに対応したEMPを放射する。



「EMP放射。周波数Pパフォーム」



 それはシルバーの濃い色、薄い色、様々なメタリックな正方形がモザイクとして重なり合ったエネルギー。

 シンギュラリティ世界で作られた、対R用のパフォーム。加藤の刀剣。その周波数は刀剣をも砕き、消滅させ、パフォームの刈谷を機能停止とさせた。墜落する刈谷に対して、更に上空へ逃げる加藤。



「恭介―!!」



 パフォームの機能が無くなった刈谷が墜落する。それを受け止めようと掛け走る桜。しかし間に合わない距離。能力が発揮できない桜。

 桜が追いかける支所で茂る木々の裏側に墜落する刈谷。けれど、地面に叩きつけられる衝撃音は、桜に聴こえなかった。



「【シンギュラリティ世界の桜ちゃん。間に合ったよ】」



 木々を超えて目視した桜に映り、初めて耳にする者の声。それは刈谷を抱えた町田の姿があった。



「あなた、は……誰?」



「【こいつともう一人には、無理をさせたようだ。やはりシンギュラリティ世界の科学を超えた存在。さすがEARTHだ】」



 額から血を流し、引き裂かれたスーツで現れる町田。それは所長室で崩れた天井の下敷きとなったRの町田を媒体にしたパフォーム。シンギュラリティ世界の町田が媒介した存在。何度かRの町田の姿を借りて、パフォームを試験していた町田。

 その日、朝と夕方の二度、Rの町田の意識をほんのひと時パフォームとして潜入していた。朝にはRの桜に世界への違和感を訪ねたひと時、田村が屋上に現れたひと時、その度にモンストラス世界の認識を確認していた。

 残り時間が無い世界。間もなく500億年先の世界へ進むモンストラス世界。それは確実に惑星の寿命が終わる年数。その終わりを見届けにきた町田。刈谷を地面に横たわらせると、EARTHの方向へ歩き出す。



 その時、刈谷の体から抜ける認識色。それはパフォームとしての機能が消滅した虹色。そしてRの刈谷としての機能が終わり、本来の姿を現した者。それはデジャヴュのバグにより春日の姿に変えられていた、本体であり、シンギュラリティ世界が故郷である刈谷恭介の姿。



「恭介!! やっぱり、恭介だったのね!!」



 刈谷を抱きしめる桜。その体からは鼓動を感じる。



「生きてる!! 生きてるわ!! 恭介!!」



 更に刈谷の体から抜けるパフォームとは別の認識色がある。それは桜に見えない認識色。それを見ることが出来るのは、EARTHとRの桜だった。



「ここに来ていたんだね。キャリア」



 EARTHが零した言葉に反応するRの桜。刈谷の体中から終わりなく抜け続ける銀色の光。それが刈谷の体から出尽くすと、それは次第に肉眼で確認できるほどに上空へ集まる真球しんきゅう。時折歪み、形を自在に変化させながらも、一定の場所から動かない銀色の球。

 Rの桜が求めていたキャリア。EARTHがANYを経由して埋め込ませた成分。キャリアを備わせられていた刈谷。肉体を春日へと変化させ、パフォームを備わせ、Rの自分と同化して、全ての能力を使い果たしたあとに残る本来の姿。誰かに殺められた訳でもなく、誰かに奪われた訳でもなく、護りきった自分。護りきった体と、タイムリミットが終わった世界。その世界での人類に保有させる必要が無くなったかにも思えるキャリアは自ら外に出た。



「ゲームオーバー。誰も奪えなかったね」



 支所の屋上と高さが同じ空中で、うつむくように降下し始めるEARTH。そのEARTHの眼下でフェムの防衛modeで待ち受ける田村。地面に墜ちる前に、EARTHの眼前にシンクロしてくるパフォームの町田。EARTHの両腕を握りしめ、決着の言葉を放つ。



「【EARTH!! シンギュラリティ世界で分析させてもらっていたぞ!! 周波数E(EARTH)! これで! THE・ENDだ!!】」



「いや、終わりは、この世界だよ。もがいてごらん」



     ◆◆◆



 19:34 シンギュラリティ世界。地下施設。

 誰もいない地下施設で、加藤達哉がANYへ命令した最後の計画完了のアナウンスが鳴り響く。



<全惑星-500億年-準備完了-更新開始>



     ◆◆◆



 世界が蠢く。それを感じられるのは、目覚めている者。



 世界が泣く。屋上でたたずみながら、それを心で理解する加藤。

 世界が血を流す。それはマグマとして。

 その世界に浮かび上がるキャリア。それは逃げる事なく、何かと共鳴する。全人類の頭に鳴り響く。

 町田はEARTHの両肩を掴む。流し込まれる周波数は、EARTHの両腕の自由を奪う。そのまま全身に流れ込む電流。流され続けるEARTHである春日の表情は、何を恐れるわけでもなく、抵抗するわけでもなく、モンストラス世界の悲鳴を楽しんでいた。



「これがこの世界の消滅かあ……けれどあのキャリアの動き、もしかすると、宇宙の運命に情報が届いたのかもね。俺が見たかったものが再び……」



 EARTHが町田に漏らす言葉。科学者として、理解をしたい町田。弱める電流。

 動き始めた世界。それはシンギュラリティ世界の惑星管理室で動き出している。



     ◆◆◆



 19:35 シンギュラリティ世界。上空。

 その空は、包まれていた。曇った色よりも、鮮やかな銀色。白にも感じる世界の上空には、宇宙に散りばめられた成分が形を成し、巨大なキャリアである『宇宙の果てからの意思』が伝達された。



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作品名:シンクロニシティ 作家名:ェゼ