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シンクロニシティ

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「お前はツイてるのかな。生への執着かな。連れてきたあいつの悪戯は理解出来ないけど……最後は同じなんだ。変わりようがない。どっちを選ぶかなんて、どっちでもいいし。あいつには必要な事は伝えたし。でも、あいつ、全てを活用する気なの? 面白い! モンストラス世界でも見に行ってみようかな! 人間の醍醐味のはずだよ! カオスを奇跡と思い込みたい野次馬な習性! ハハハ! ねえ……お前に見せられなくて残念だよ。見てもわからないかな? じゃあ、咲をしばらく頼むよ……あっちの春日雄二くん」



     ◆◆◆



 18:07 モンストラス世界。風間咲の自宅。

 目を離せない桜とひとりの女性。すでに眉間をいっぱいにシワを寄せて叫ぶ声を溜めている様子がわかる桜は名前を尋ねようと言葉をこぼし始める。



「ちょっ、あの、あなたは風間……」



「キャーー!! 誰!? 誰なの!!」



 桜の突然の出現により混乱が増す咲は、部屋の奥へ後ずさり両手を前に構えて、手のひらで壁を作りながら桜を凝視する。その姿を見た桜も説明ができない現象の説明を後回しに考えて、自分の素性を明かす。



「あの、突然の事ですみません……私はLIFE YOUR SAFEのチーフをしてます水谷桜と申しますが……風間咲さんでよろしいでしょうか」



「し、知らない間に勝手に訪問されたんですか!? どっから現れたのよ!!」



 咲からの常識的に攻める声に気まずくなり、言葉につまる桜。それでも鈴村より聞いていた情報により少しでも会話に歩み寄りたい気持ちもある。咲に近づこうとするが、警戒した咲は助けを呼ぶためか、携帯電話を操作しようとする。



「お、お話を聞いていただきたいのですが……あ……これは」



 桜が話しながら近づこうとする傍らに見えた本棚に、ある写真立てが目に付いた。人に見せる角度ではない横向きであり、おそらく咲と写っているだろう二人写真。本と本棚の間に挟まれた写真立て。本棚の板に咲が隠れてしまい、見えたのは一人の男性。その男性の顔、刈谷の顔が桜に見えた。桜が一歩本棚に近づくと、ビクッと反応して警戒する咲の挙動を気にせずに、写真立てを手に取る。



「か、刈谷とは……親しいご関係だったのでしょうか」



 携帯電話の操作の手が止まり、桜の手にある写真たてを見る咲。表情は変わり、目が泳ぐ困惑と悲しみを滲ませて、口元は何かを語ろうと感じられる



「そ、その人の事……私……知りません……面識が全くないんです」



「え……面識がない? ではなぜここに」



「私の……私の恋人と……写真が入れ替わったんです!」



     ◆◆◆



 18:10 シンギュラリティ世界。管轄室。

 ひとりで管轄室にたたずむRの鈴村。病室で桜との会話を切り上げ、その続きをする空間は病室ではふさわしくなかった。そして待ち人が入室しやすいように、管轄室の厳重な三重のドアを簡易に一枚のドアで待つ。



「水谷です」



 管轄室のドアが簡単に開く。病室で着替え終わった桜はRの鈴村に呼ばれ普段管轄以外入室禁止の管轄室へ入室を許される。入室すると同時にRの鈴村は桜の体をねぎらうと同時に、ANYの報告も部屋に響く。



「水谷。体は持ちそうか?」



<モンストラス世界-更新-下村敦>



「はい。思ったより大丈夫です。ここで……モンストラス世界を操作しているんですね」



「そうだ。モンストラス世界の時系列はここで操作できる。ただし、大きく過去に戻る事ができるわけではない」



<モンストラス世界-更新-下村敦>



 同じ者がモンストラス世界で自殺を図る。桜にとってはANYの報告する言葉の意味はまだピンとこない響きではあるが、それだけここではモンストラス世界のデータが手に取るようにわかることから刈谷を救うことにも繋がると感じる。



「けれど、先ほど言われた、死なない世界というのは」



<モンストラス世界-更新-下村敦>



「死んだ事をなかったことにする程度に過去にデータをさかのぼる事ができる」



---*---

 デジャヴュ(更新)。

 それは常に毎秒過去60分のモンストラス世界全体のRを記録し、最大60分までにさかのぼれる程度のもの。

 それ以上の過去をデータとして記録するのは膨大な容量がシンギュラリティ世界のANYへの負担が必要になる。その負担が最低限影響なく保てるボーダーラインを定めて60分とANYは計算した。その中で死の影響がない過去までさかのぼり、回避させられてきた。

---*---



「それを繰り返し、同じ死への行動をすると、先の未来にいけないのでは」



「それが問題だ。今報告が部屋へ流れているように、一度自殺をしたものは何度も同じ行動をする」



---*---

 自らを殺める者。それを続けると、Rの世界では劣化が始まり、ANYはその者と他のANYを護るために、その者のRの記憶を削除する。自殺をする理由も忘れるように。

---*---



<モンストラス世界-下村敦-R劣化-強制記憶削除-開始>



「恭介がそれを繰り返すと」



「今、強制記憶削除の情報が聞こえているように、お前との記憶が蘇る保障はないだろう」



「わかりました。ところで、管轄のRは……今、どうしているのですか?」



 Rの鈴村のことを聞かれ、まゆ一つ変化させないRの鈴村は、自分の事ではないように言葉を切り替えした。



「シンギュラリティ世界を乗っ取るつもりだ」



     ◆◆◆



 18:11 モンストラス世界。風間咲の自宅。

 やっと会話ができるかと言葉を聞き入るRの桜。深く、そして自然な会話になるように丁寧に話を進めていきたい。けれど、モンストラス世界でおきるデジャヴュは、目覚めている者にとって、強制的にも時間が戻される。



「あなたの恋人は……は!!」



 18:06 モンストラス世界。支所裏口

 Rの咲と会話している最中に5分前の鈴村との対話した時間まで戻される。



「水谷、デジャヴュが起きたぞ」



「か、管轄……誰か死んだのでしょうか」



 突然のデジャヴュ。それは目覚めたと言われる者にとって共通の出来事。

 そのデジャヴュの発端は、データの刈谷と同じ精神病棟に収容された男。下村敦。モンストラス世界の朝。女性と崖から心中しようとした男である。



「ここでは誰が原因だかわからないな。お前は会ったか? 風間咲に」



「はい、会いました。彼女の持っていた写真立ては刈谷の写真でした」



「面識は刈谷とありそうか?」



「いえ……最後に言っていた言葉では、知らない人物と言ってました」



「どうやら今までも……う!」

 

 18:06 モンストラス世界。支所裏口。

 繰り返される下村敦の自害。



「管轄! 同じ者の仕業でしょうか!? まさか、刈谷が?」



「田村の可能性もある。あまり続くと……く!!」



 18:03 モンストラス世界。支所裏口

 下村敦の考え通りに少しずつ過去に戻る時間。

作品名:シンクロニシティ 作家名:ェゼ