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シンクロニシティ

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「命令レコーダー……ダウンロード」



 ANYに記録させない脳に直接響くシークレットレコーダーを、ZOMBIEは、義務的で機械的にダウンロードさせ再生する。



【そこでリンクしろ!! その後モンストラス世界へ戻り、不死現象の演説を実行!!  以上!!】



「了解」



 会場にいる者に見られないように確認し、緞帳幕へ身を隠し、ZOMBIEは胸から葉巻を取り出すと、葉巻を割り、カプセルの粒子を自分に振り掛ける。



 光るZOMBIEに近づく足音。支所より緊急連絡を受けて鈴村を探す秘書。それは支所で暴走したトラックが破壊活動を行っているという連絡。爆発も発生したことで増員の依頼も含めて管轄の判断も確認するために、すぐに鈴村の姿を探したが、ZOMBIEはすでにリンクされ、そこには割れた葉巻の半分が落ちているだけだった。



     ◆◆◆



 15:46 シンギュラリティ世界。モンストラス惑星管理室。



「来たか!」



 鈴村はZOMBIEに近付く。目的のものを手に入れるため、そして、この空間から脱出するため、ANYの機能をフル活用させてZOMBIEを作り上げた本体の鈴村。ここにZOMBIEがリンクできたことで、心配の半分は解決した。



「持っている葉巻を全部貰おうか」



「わかりました」



 ZOMBIEから葉巻を受け取る鈴村。そしてすぐさまANYに指示する。



「鈴村和明のZOMBIEをリンクしろ!!」



<鈴村和明-ZOMBIE-リンク-了解>



 リンクソースが現れ、ZOMBIEの鈴村を光で取り囲む。ZOMBIEが間もなく消える間際、人間の鈴村はZOMBIEに伝える。



「俺を確認するまで一旦会場の外に出てるんだ」



「わかりました」



 鈴村自身が動くことが可能となったひとつの解決。そして鈴村を閉じ込めた人物を見つけ出し、企んでいることを捜索する行動に出る。その男の捜索は別のところでも行われていた。



     ◆◆◆



 16:17 シンギュラリティ世界。本部警備室。



「おい! どうした!」



「あ……あぁ、チーフ……いえ……あの」



「誰かにやられたのか!?」



「あ! はい!! 支所の制服を着た男です!! 突然頭を掴まれて……名前も言わず……神がどうとか言っていて……目立つくらい体格の良い男……多分……出て行きました」



 本部のチーフはトランシーバーを使い、職員に指令する。



【全職員!! 館内で暴行が発生した!! 支所の制服!! 目立つ大柄な男性!! 心当たりある者!! 又は不信人物を捜索しろ! 俺は管轄に報告する! 以上だ!】



 本部チーフは職員に指示し、管轄室に内線連絡をしようとする。意識がまだ朦朧もうろうとしている警備職員。思い出したかのように本部チーフへ伝える。



「あ、あと……こうも言ってました」



「なんだ!?」



「管轄は……この世にいないと」



「な!? ばかな」



 言葉の真意を知りたい本部チーフ。それはモンストラス世界へ行っているという意味なのか、それとも鈴村の身に何かあったのかと思考を巡らせながらも、状況が全てはまだ把握できていない中で、今できる最善を考えて管轄室へ何度も内線を鳴らす。そこへトランシーバーからひとつの連絡が入る。



【チーフ!】



【なんだ!!】



【先程緊急手術した人物が行方不明です!!】



【手術をした時間はいつだ!!】



【14:00から15:30くらいと思われます!】



 警備職員は口を挟む。



「別の人物です!! 私が倒れたのは15:00前です!」



【そいつを捜せ!! まだ中に居る可能性がある!!】



【了解です! 看護職員だけで捜索していたようですので、香山先生にも報告致します!】



「何が起きてるんだ……」



 警備職員を倒した男。行方不明の重傷者。管轄である鈴村の安否。突然起きた問題に何から対処して良いか悩む本部チーフであるが、今できることは館内にいるかもしれない重傷者と鈴村への連絡であった。

 そのような騒動を知らない者もいた。それは凄惨な状況から助け出された現状を理解しない者。



     ◆◆◆



 16:28 シンギュラリティ世界。本部個室病床。



「ここは……ん! はぁ……体が」



 ベッドが一つだけの個室。無駄の無い空間の窓際。起き上がってはいけない痛みの認識と違和感を感じる本体の桜。自分は死んだものだと思っていた加藤の館での出来事。その後の状況がわからず、刈谷の安否の心配。なぜここにいるのかという理由など、考えることが沢山ある中、味わったことのない痛みが走る体の現時点での状態も理解したかった。



――私はあの館で……死んだかと……恭介は!? 「ん!! あああ!!」



「桜さん! まだ無理よ!! 寝てなさい!!」



 静かに開いた扉。起き上がろうとする桜を瞬時に見た弥生は、命令口調に言葉を発する。



「私はどうやってここに……いえ、あの! ここは! シンギュラリティ世界でしょ!?」



「そうよぉ。管轄に運ばれて緊急手術を施したのよ。何があったのぉ? 今の技術がなきゃ……いえ……すでに手遅れに見える斬撃ざんげきの痕跡よ?」



「それは……任務中での事ですので……あの、私は、いつ起き上がれますか!?」



「手術は完璧よ。抵抗力を落とさない為にも、明日には立ち上がって貰うわ! けれど様子は見ないと」



「あの……管轄は」



「多分、その任務の処理でバタバタしてるんじゃないかしら……二人運んでくるぐらいだから」



「二人?」



「失礼します!」



 突然扉が開き、慌てた口調で男性看護職員が入ってきた。その藪から棒にも感じる入室に弥生は憤りをぶつける。直後に気づくのは、それも考えられないほどの狼狽ろうばいであった。



「ちょっとお! レディの個室よぉ? ノックしなさいよぉ!! ……どうしたの?」



「すみません! あの!! 先程手術した患者が見当たりません!!」



「え!? すぐ行くわ! 桜さん! 休んでなさい!」



「え!! あの! その男性って、もしかして……」



 桜の言葉に返答なく退室する弥生。鈴村が運んできたというもう一人の人物。桜からすれば、それが刈谷であってほしい気持ちが強い。見当たらないということは、生きているという人物。それが刈谷でなければ、誰かということを考えながらも、無理に動いてはいけない予感がする体を起き上がらせず、布団に潜りながら刈谷の無事を祈った。



     ◆◆◆



 16:31 シンギュラリティ世界。本部。

 走り回る職員。縦横無尽に捜索する。それは病室から抜け出したと思われる包帯を巻いた者。その上から病床用の服を着せられた者。どこまで歩ける状態か、手術が終わったばかりの縫われた傷が開きやすい状態。探し回る職員から隠れるように身を隠す男の姿がある。



「ハァッ! ハァッ! ハァッ!」


作品名:シンクロニシティ 作家名:ェゼ