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シンクロニシティ

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 少し考える鈴村。先に桜をシンギュラリティ世界に戻し、「ZOMBIE」との奮闘次第で今まで桜と話し合った計画の続行性を図ることも視野に入れていたが、刈谷に一番近い妻である桜からの言葉を無視することもできず、ゆっくりと、もう一本胸のポケットより葉巻を取り出し、桜に渡す。



「仕切直し……いや作戦は失敗だ。そして、ここで刈谷をシンギュラリティ世界に戻しても姿は変わらんぞ」



 体を横に向けながら葉巻を手渡した鈴村は桜に背中を向けて二階にまで上がってきたであろう無数の気配に対しての臨戦態勢を取るべく腰に忍ばせたホルスターに収納された拳銃に手を掛けようとする。葉巻を胸のポケットに入れた桜は右に握り締めていたカプセルを指で眺めるように転がせたあと、両手の指でしっかりつまむ。



「はい……作戦は、予定通りにやります!!」



「何を!? 水谷!!」



 桜はカプセルを割り、背中を向けていた鈴村に振り撒く。言葉と同時に鈴村が振り向いた時には、鈴村を中心に全身に付着し始めていた。



「馬鹿な事を!!」



「管轄! データの更新入力お願い致します!! それまでにZOMBIEを殲滅せんめつさせ、予定通りに事を進めます!! 刈谷……恭介は……恭介は完全な形でシンギュラリティ世界に戻します!!」



 鈴村に撒かれた粒子は、虹色に薄く光り、付着した存在の認識を始める。鈴村は自分を眺めながら、すでに事は始まり、自分が放つ言葉の無意味さを理解した様子で桜に返事を返した。



「やり遂げてみせろ……春日のRが消えた時、不死現象が始まる」



 桜の行動を承認し、出来事の予測を伝えた鈴村の全身は光に包まれ、モンストラス世界から姿を消した。



「恭介……あなたを元に戻す。お家に帰るのよ……二人で」



 倒れている春日の姿をしている刈谷を優しい眼差しで見つめ、語る桜。春日のRと桜のRを討ち果たす目的の前に迫り来る「ZOMBIE」であろう存在を殲滅しなければならない状況に、覚悟を放つ。



「さあ……来なさい!! クソZOMBIE!!」



 二階から三階に上がる足音の数が減る。広くはない階段を少数ずつ様子を見るためなのか。桜の気合が聴こえたことで判断したことなのか。桜は願った。刈谷の姿で現れないことを。けれども、その願いは二階から三階の間の踊り場に現れた瞬間、周りの視野が狭まり、集団の先頭を歩いてくる複数の刈谷。刈谷の姿をしたZOMBIE達は桜と目が合う。



「桜だ……」



「妻だぁ……」



「次期チーフ……」



「殺せ……」



「殺せぇ……」



「命令予定通りにぃ」


作品名:シンクロニシティ 作家名:ェゼ