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シンクロニシティ

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「すまない……そして刈谷、お前が無事で良かった」



 刈谷は桜の謝罪と内密を快諾すると、桜を救う手がかりに近づくため、瓦礫の撤去を進める。



「刈谷! 何を捜しているの?」



「はぃ! この階段の地下室に加藤達哉がいるんですよぉ! まだ生きているかも知れません!」



「二人の効率は日が暮れるわ! 今おそらく応援が来ているが、更に職員増員の要請出す! その方が早い」



「そうですねぇ……解りました!」



 瓦礫の量を見て諦めのついた刈谷は、桜の指示の元、職員の到着を待つ。

 そしてここまでの回想の詳細を町田に伝えた。



     ◆◆◆



「所長ぉ! チーフは問題なくこなしてますよぉ! どうか今回の謹慎以外の処分は考えないで欲しいんですがぁ」



 桜を庇いたい刈谷。半年前の出来事は、自分を失い、自分を殺し、苦しんだ。一歩間違えれば、今の桜は、精神を疑われている自分の姿。もう少し、桜を監視する時間が欲しい。もう少し、希望を持ってほしい。そして、普段自分が体験している『時間が少し戻る』と感じる不可思議なデジャヴュ現象と、支所内で起きた事件でのZONE現象。

 桜への考慮と引き換えに、全てを町田に話したかった。



「そうか……とりあえずわかった……ただこのままって訳にはいかないな」



「どうする気ですかぁ? チーフは仕事に支障なくてぇ、忘れてるのはぁ、俺の事だけですよぉ? それに……おかしいですよぉ……さっきも言った春日の事。職員に思い出話してもぉ……不思議な顔されるんすよ……ん? 何か今、大事な事が思い出せたような……そうそう! あんな盛大な葬式まで支所全体でやったのにぃ」



「葬式……はぁ?……あぁ、桜は問題ない! 良くやってる! 感心する!」



「じゃ、じゃあ! チーフはおとがめなしですね!」



 町田は落胆混じりな溜息をつき、おもむろにスーツの内側から何か取り出そうとする。

 半年前の全てを聞いた町田。本気で刈谷が話しているのも理解した。刈谷の言いぶんも理解した。けれどこのままにはしておけなかった。このままの精神状態では放置できなかった。

 半年間、変わらない症状に、所内でも限界がきていた。職員からも不安の声が上がった。とても見てはいられないと。

 所長として、町田は、苦渋の決断のように語りだす。



「そしてお前の身体能力の高さと判断力……勿体ない……残念だ……春日!」



「は?」



 町田は刈谷に向かって『春日』と口に出した瞬間、刈谷の手首に手錠を掛けた。

作品名:シンクロニシティ 作家名:ェゼ