「舞台裏の仲間たち」51~52
「凄い、順平。
あんた、女の研究にかけては超一流だ。
遊郭とか、遊女や芸妓には、やけに詳しいわねぇ・・・・
ははん、実は
ウサギの皮を被った、狼だな」
「あのなぁ・・・
この程度の知識なら、日本男子の一般教養の範囲だ」
「ははぁ・・・なるほどね。
だから日本から来るエコノミック・アニマルは
おしなべてみんな、どスケベなんだ。
よく、わかりました」
まったくの藪蛇です。
川に沿って細長く伸びるこの温泉街には
いたるところに日本風の建築が残されていて、なぜか日本の田舎でよく見かけるような
古びた温泉街のような情緒さえも感じさせてくれます。
風呂上がりの貞園は源泉の一つ、地獄谷まで歩こうと言い始めました。
当初の目的からはすっかりと逸脱をして、今はただバカンスを楽しんでいる
普通の少女にと変わりきっています。
温泉街の小道に沿って、小川が流れています。
小川といって流れているのは源泉から湧き出ている温泉です。
それも足湯くらいなら充分に楽しめそうなほどの湯温を充分に保ったまま、
かなりの水量で、ゆうゆうと流れていきます。
貞園がまた、至近距離に身体を寄せてきました。
風呂上がりの良い匂いのする髪が、リズミカルに私の鼻さきで右に左に揺れています。
長い腕は、さっきから腰に巻かれたままです。
そんな歩きにくい密着のまま、温泉が流れる川を上流まで上っていくと、
「熱海」という名前のホテルが見えてきました。
温泉といえば「熱海」というのは、どうやら日本でも台湾でも同じようです。
ほどなくして「地熱谷」と呼ばれる源泉地に到着をしました。
ここは湯量をほこる北投温泉の源泉地のひとつです。
硫黄交じりの水蒸気が辺り一帯を覆っていて、いたるところから
源泉が噴出する様子が見て取れました。
作品名:「舞台裏の仲間たち」51~52 作家名:落合順平