「舞台裏の仲間たち」 49~50
「貞園には、
けっこう悪女の素質もありそうだね。
そういうことなら、北投温泉に私も是非行ってみたい。
公娼制度は日本軍が持ち込んだという歴史もあるし
他にも従軍慰安婦の問題などもある。
女性を描くうえで、避けて通れない問題の一つが「性のモラル」だ。
今書いている私の作品にも、なんかの役に立ちそうだ。
よろこんで同行をしましょう」
「あら、あなたは物書きなの?
女性を書いているなんて、随分と物好きな金型屋さんね。
どんな作品かしら、気になる」
「じゃあそれも、今夜ゆっくりと話題にしましょう。
ところで一つだけ、君に聞いてもいいかな。
お店に出ていて、もしも指名されたらどうするつもりだったの。
貞園は見た目も悪くないし、若いんだもの、
けっこう引く手あまたかもしれないよ。
そうなると、乙女にピンチが訪れると思うけど、
そういうときはどうするつもりだったの?」
「う~ん、実はそのことなんだけど・・・
潜りこむのは簡単だったけど、どうやって断るのか悪戦苦闘をしているの。
農協の団体ツアーなんかは、もう女と見ればやることしか
考えていないんだもの。
隣に座っただけで、もうべたべたと触り始めるし、
エッチだけがしたくてお金を見せびらかすんだもの、もう最低。
なんでもお金で買えると思っているんだ。
日本人って順平以外は、みんなエコノミック・アニマルだ」
■公娼制度とは
公娼制度とは、簡単に言えば、娼妓として稼ぐことを望む者に対して、
国家が許可を与える制度のことです。
間違えてはならない点は、あくまでも公認された売春が存在したのであって、
売春そのものが公認されたわけではないということです。
そのために、『私娼』は摘発の対象となりました。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 49~50 作家名:落合順平