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「舞台裏の仲間たち」 47~48

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 他のテーブルについていた貞園が私の顔を見つけるなり
あっというまに飛んできてしまいました。
「大丈夫なの?あっちはほっといても」と心配して声をかけても、

 「農協のスケベな爺なんかは、大嫌い。
 お話をするよりも、連中は女と見れば、ただただ遣りたいだけだもの。
 女を何だと思ってるの。
 私は嫌いだ、あんなのは」

 と、まったく意に介せずに笑っています。
たしかに、此処のお店では自由恋愛が基本の様で、女性たち側にも
『拒否権』が保障されているようです。

 「そうすると、俺も
 あらためて貞園を、口説く必要があるということかな。
 自由恋愛のためにも・・・・」

 「口説いてくれなくても、今夜も行くわ。
 でも、変だわね、だいぶスッキリした顔をして。
 ビジネスがうまく行ったのかな、
 悩みがひとつ消えたようだわね、そんな顔をしてるわよ。
 あなた、ジュンペイくん」

 「もう、名前を覚えてくれたんだ、
 有りがたいね。
 大学生だと言っていたけど、専攻はなんなのさ」

 「人間行動学よ。
 心理学、社会学、人類学などのもろもろよ。
 行動科学(こうどうかがく)の全般。
 人間の行動を、
 科学的に研究をするの」

 「ずいぶんと難しそうな学課だね。
 ここで働いているのも、その勉強の一環かな? 」

 「まさかぁ、
 ただの学費稼ぎのためだけよ。
 でも、簡単に男たちとは寝ないわよ、わたしは。
 けっこう気難しいんだから、こうみえても。
 わたしって。」

 鼻のところに小皺を寄せて、貞園が悪戯っぽく笑います。
10時を過ぎた頃に、かなり酩酊をした状態で千鳥足の亀田社長が、
見たことのない日本人客を一人連れてやってきました。
きっちりとした背広姿から察すると、商社の営業マンか、金融関係の
担当者のようにも見えました。

 こちらの様子に気がついたようですが、
やぁと、いつものように片手を上げただけで、少し離れた席に
背広姿と共に背中を見せて座ってしまいました。
やがてパートナーの女性を傍らに呼びつけると、なにやら小声で耳打ちしています。
そのパートナーの顔色が曇りました。

 それは、傍目にもあきらかに拒絶を見せたような素振りに見えました。
しかしそれにもかかわらず、亀田社長の説得は執拗です。
観念を決めたのか、やがてパートナーが首を縦に振りました。
見かねたように、貞園が私の隣で舌打ちをします。

 「エコノミック/アニマルだ・・・・」

 「え?  」

 小指の爪を噛みながら、貞園が、強い挑むような視線で
亀田社長とパートナーの姿を睨みつけています。