ACT ARME3 失くしたものと落としたもの
仕込み針を飛ばし、隙ができたところを消して逃さず一撃を叩き込む。そしてグロウが反撃をする前に確実にその場を離れている。
このヒット&アウェイ戦法は、グロウの体力を確実にそいでいった。
「ちっ、ちょこまかウザってえ。」
先程から自分の攻撃が空振りを続け、イライラし始めている。
また仕込み針が、今度は左上から飛んできた。咄嗟に腕でかばうが、利き腕でかばってしまったため(グロウの利き腕は左)、攻撃の出が鈍くなってしまった。
その隙にまた一撃。いや、好機だと思ったのだろう、連撃を繰り出した来た。
ハンマーを振るうにも、距離が近すぎて却って当たらない。
それでもかろうじて防御に回っていたが、鳩尾に一発喰らってしまった。
「グッ・・!」
ここでできた隙を逃すはずもない。止めの一撃。
「破壊拳!!」
拳に孔を溜めた会心の一撃。これをグロウはモロに喰らった。
そして、もう片方の相手もグロウの首筋に向けて大量の仕込み針を放った。
当たれば一巻の終わり。だが
「あめえよ。」
そう言うと、拳を叩き込んできたやつの腕を取り、針が自分に突き刺さる前にそいつを盾にした。
「ガハッ・・・・!?」
致命的な攻撃を受けて、よもやこれほどの力が出せると思っていなかったのだろう。抵抗する間もなく、飛んできた針をすべて受け止めることになってしまった。
グロウは動かなくなった敵を放り投げ、地面にハンマーを叩き込んだ。
「地割(じかつ)!」
技を叫ぶと同時に地面が割れ、大きな亀裂が走った。それも、ちょうど跳んでいる相手の着地地点となる場所に。
「!!」
地面に降りかけている時に、急な動作変更などできるはずもない。そのまま亀裂に落ちる形ではまってしまった。
抜け出す暇もなく、既に目の前にはグロウが仁王立ちしていた。
「よお。今まで散々うぜえ攻撃かましてくれたなあ。礼替わりだ。きついのをくらっとけ。」
そして構える。
「場外」
大きく振りかぶる。
「ホームラン・・・!」
ハンマーに孔を溜める。
「ハンマーーーーーー!!!」
そしてそれを大きく振り放った。
まともにくらった相手は、悲鳴を上げる間もなく、青空に輝く一つの星へと変わった。
「さて、こちらもそろそろ決着つけようかね?」
グロウの決着を見たルインが、こちらも負けじと攻めかける。二対一、剣の数で言えば三対一である。相手もかなりの実力者だ。普通なら追い込まれて当然なのだが・・・。
二方向からの同時攻撃。それに対しルインは刀を鞘に収め、深く腰を入れたあと、一気に引き抜いた。
「廻閃(かいせん)!!」
ルインの体とともに、一回転した斬撃は、二人の相手を同時に飛ばした。
すぐに体制を整え、反撃に出ようとするが、その時には既にルインが頭上に迫っていた。
「ジ・エンド。」
そして刈閃(げせん)を放つ。とっさの防御も、ルインの技の攻撃力の前には無力だった。
「さて、あと一人 ――――――――――!」
一人撃退し、ルインが振り返った瞬間、もう一人は既に眼前まで迫っていた。
振り下ろされる双剣。ルインの防御は間に合った。だが―――
「タトールワルス!」
そこから繰り出される鮮やかな双剣の連撃に、ルインも若干押され気味になり始める。
「甘い!」
剣撃ばかり注意を払っていたルインに蹴りが放たれる。流石に防御できず、喰らってしまったため、後ろに下がり、隙ができる。
そこを逃さず、二本の剣をまるで一本の剣であるかように束ねてもち、跳躍からの落下の勢いと、自らの孔を込めた強烈な一撃を放った。
「ソウツイ!!」
ッガッギィィ!!
と、金属が激しくぶつかる音が鳴る。吹っ飛ばされたルインはそのまま壁に衝突した。
止めを刺さんとばかりに飛びかかろうとした双剣使いだが、その瞬間に感じた異様なほど大きな孔に、すぐに動きを止め、警戒するような構えを取った。
ルインは、刀を再び鞘に収め、深く腰を落とし、力と孔を大きく溜め、それを一撃のもとに解き放った。
「破断閃(はだんせん)!!」
放たれた必殺の居合斬り、防御も回避も無意味だった。本来なら決して届くはずのないルインの間合いから、完全に離れた場所で警戒していたのだ。
だが、それでもルインの斬撃は、過たず双剣使いを一刀の元に斬り伏せた。
「うん、やっぱ強いわね。ルインたちは。」
「そうですね。今の一撃も、なかなか洗礼されたものでした。さて、残るは一人。レックさんだけですが―――」
と、レックが最後の一人と対決している方に目をやると、ちょうどレックが片膝をついて息を荒げているところだった。
「―――なんか、どう見ても押されまくっているように見えるんだけど?」
「そのようですね。」
「一対一なのに、なんで押されてんのよ?」
その質問に、若干苦笑気味で答える。
「相手の戦術を見誤ったためといいますか、まあ見ていればわかりますよ。」
「ぬん!」
敵が拳を地面に叩き込む。するとレックの足元の地面が急に勢いよく突き出し、レックを大きく上に飛ばした。
それを見た敵は、腰を落とし、両腕を腰にやったまるで「押忍!」と言った時によくやるようなポーズをとる。
するとその手に握りこぶし大の岩が出現した。それをレックに思い切り投げつける。
レックは空中で体制を整え、飛んできた岩を叩き落とす。そして棒の先に炎を灯し、落下とともにそれを突き出す。
だが、その行動は読まれていた。敵は既にその手に岩を纏わせ、文字通りのイシツブテで攻撃を放つ。
「岩砕(がんさい)拳(けん)!!」
炎と岩の衝突。だが、パワーの差でレックが負けた。
「もしかしなくても、あいつアトリネーターってこと?」
「そうですね。おそらく土の属性使いなのでしょう。炎と土、相性は五分五分ですが、何分、パワーとリーチの差で圧倒的に負けていますから、手ごわい相手です。」
ツェリライも眉をひそめる。レックに勝機があるとすれば、それは相手が完全にノーガードになった時だ。だが、その状況を作り出すのは至難の業である。レックはどう立ち向かうのか。
「興味深いですね。」
そう一人呟くツェリライの言葉は、アコの耳には入らなかったようだ。
「焔弾(フレイガン)!」
レックが先に灯した炎を飛ばす。だが、敵は自分の目の前に岩を出現させ、防御した。
と、そのままその岩を両手に抱え、頭上に持ち上げた。
「大土陥(だいどかん)!!」
飛ばされてきた大岩を、なんとか回避する。だが、再び足元の地面が突き出してくる。
「ガッ!」
さっきの一撃とは違い、回避後の隙を突いた攻撃だったため、ダメージを受ける。だが、レックは建物の壁を蹴り、さらに上へと高く跳んだ。
その頂点から棒の両端に炎を灯し、火炎弾の連撃を放つ。
「焔連弾(フレイバルカン)!!」
再び岩で防御。そして今度こそ大土陥(だいどかん)を食らわせようと持ち上げたのだが・・・
もう既に地面に降り立っているはずのレックがいない。驚いて周囲を探す。
「こっちだ。」
上から声が聞こえ、弾かれるように見ると、レックは自分の得物を建物に突き刺し、それに掴まることで落下を止めていた。
相手が反応するより早くレックが動いた。
壁を蹴り、大きく跳躍すると敵の真後ろに立ち棒を大きく後ろに構えた状態で炎を灯した。
作品名:ACT ARME3 失くしたものと落としたもの 作家名:平内 丈