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ACT ARME3  失くしたものと落としたもの

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ようやくルインの意図と、ことの状況がわかってきたアコである。
となると、さらにまた疑問がわくのは当然なわけで・・・
「まあ、そうなってるかも知れないってことはわかったわよ。でも、そうだったら何を隠しているのかしら?」
それに関しては全員が首を横に振る。
「知らない。今起こっている現状と状況証拠から推測してるだけだからね。確証を持つには情報が少ないんだよ。」
「ふ〜ん。       ・・・あれ?ってことは、もしかして今言ったルインの話はただの感違いなのかもしれないということ?」
「ピンポーン!大正解!」
いい笑顔である。その笑顔を見たアコは急速に不安に襲われる。
「・・・あたし、帰るわ。」
「なんで?」
「なんでじゃないでしょーが!勘違いで治安部隊を敵にまわしちゃったりしちゃったら大変だって事ぐらいは、あたしにだってわかるわよ!」
「まあ、確かにそうだね。でも、帰るのは絶対にお勧めしないよ。」
「なんでよ?」
「さっきみんなで逃げ出した段階で、アコちゃんも捕縛対象になってるはずだから。家に帰ったら即お縄だよ?」
何か言い返したい。この状況を覆したいという激しい思いに駆られる。だが、現実は非情である。
「あの人が、何とかしてくれないかしら・・・?」
「いやぁ、僕も係長は信頼してるけどね。でもそこは中間管理職のジレンマというか、上に自分の我儘は通せないし、なんかやらかしたら部下にまで被害及ぶしで、どうしようもないんじゃないかな。ほんと、頭の茂り具合が心配だよ。」
正論だが、お前にだけは絶対に言われたくないランキング堂々の一位を獲得できる台詞を吐き、ポムッとアコの肩に手を置いた。
「ドンマイ!」
親指をグッと立てつつ、素晴らしくさわやかな笑顔を向けるルインに、アコは心から思った。



殴りたい、この笑顔




因みに、アコは思ったことはすぐに実行するアグレッシブなタイプである。





顔面が陥没しているルインを余所に、作戦会議が開始される。
「それで、これからどうするのさ?」
「本来なら僕が情報収集をするのですが、ここではしょうがありませんしねえ・・・。」
ここは裏路地、いきなり逃げろと言われても、普通に逃げたのでは間違いなく足がついて追いつかれてしまうし、かといってこれといった隠れ家があるわけでもない。
というわけで、少し奥に入り込んだ裏路地に逃げ込んだのだ。
「困ったわね。」
「困りました。」
「どうしようか・・・。」
頭を悩ませていると、遠くから指示が飛ぶ声が聞こえる。どうやら治安部隊の足がここまで伸びてきているらしい。
「全く、ここの治安部隊は優秀だね。」
「ここも長居はできないね。」
一行は、再び歩き出す。


「あの・・・・」
と、不意にグロウが担いでいる行き倒れが声を出した。どうやらやっと目覚めたらしい。
「何?」
「なぜ、こんなことをしているのですか?」
「と、言うと?」
「あなたたちは道端で倒れている俺を拾った。ただそれだけで、治安部隊を敵に回してまで俺を連れて逃げる必要なんてないのに。」
確かに、ルインたちのこの行き倒れはもとより何の縁もゆかりもない。常識的に考えれば、ここまでの危険を冒して自分を庇い立てする理由など、どこにもないのだ。
そんな行き倒れの疑問に、ルインは適当に返す。
「ん〜、ここで会ったのも何かの縁。ってとこかな?」
あまりにもお座なりな返答に驚く。
「・・・それだけ?」
「まあ別に、僕はこの状況が死ぬほど危険というふうには認識してないし、それに、なんか癪じゃん?お偉いさんの言いなりになるのって。」
「そんな理由だけでこんな大騒動を起こせるのはすごいと思うけどね。」
となりでレックがぼやく。
「でもレックだって納得いかないでしょう?もし僕が立てた仮説が本当だった場合、この人濡れ衣きせられて、最悪死刑だよ?」
「・・・それは。」
そうなったらやっぱりレックだって納得がいかない。隠していることが何にせよ、隠し通すために人の命を平然と餌にするやり方など、認められるはずがない。
「ま、そういうことだよ。僕は、お偉いさんが無駄に偉そうにふんぞり返ってるのを見ると、どうもその鼻をあかして引きずり下ろしてやりたいって気にさせられるんだよね。というわけで、今僕が動いているのは、僕自身のわがままだから。さして気に病む必要はないよ。」
強引な理論ではある。というか、理論がどうかすら怪しい。でも、その言葉で行き倒れが安心したのもまた事実だ。
「まあ、ルインはやるって言ったら周りを巻き込んでもやり通すからね。色んな意味ですごいわよ、ほんと。」
「ま、それが僕の一番の美点だと自覚してるからね〜。・・・と。」
のんきに話している最中に、周囲から気配を感じる。これは、明らかにこちらを狙っている獣の気配だ。
「やれやれ、今日は千客万来だね。   もうこっちは気付いているから不意打ちは無駄だよ。隠れてないで出てきたらどうだい?」


ルインの声に誘われて、周囲から人影が姿を現した。その数は5人。
「見たところ、治安部隊じゃないね。悪いけど、自己紹介願えるかな。」
ルインの話には聞く耳を持たず、各々が武器を手にし始めた。
「やれやれ、遥か昔の武士は、戦う前に自分の名を名乗ってたっていうのにねえ。向こうがその気ならしょうがないか。グロウ、レック。手伝って。」
「おう。」
「わかった。」
「アコとツェルは護衛お願いね。」
「了解しました。」
「は〜い。」
「でもどうするのさ?向こうの方が数が多いけど。」
不安そうになるレックの質問に、まだお気楽さを崩さないルインが答える。
「ん〜、まあ僕とグロウが二人相手するから、レックは一人お願い。」
そう言うや否や、ルインは刀を抜き、目に付いた二人に飛びかかっていった。

「大丈夫かしら?あの三人。」
戦闘が始まり、とりあえず行き倒れの片方を固めているアコが疑問を漏らす。
「まあ、相手の実力にもよりますが、なんとかなるでしょう。少なくとも、ルインさんはきちんと相性のいい相手と立ち向かっていますし。」
「そうなの?」
ルインが相手にしているのは、剣使いと双剣使いという、剣剣対決である。
「同じような武器なら、こちらもだいたい攻撃方法がわかります。相性がいいというほどではありませんが、とりあえず適切ですね。」
「ふ〜ん。」
「レックさんも、徒手空拳の方を相手にしています。リーチ的に有利だというのは、わかるでしょう?」
「なるほど。」
ここまでツェリライは軽快に説明していたが、グロウのところで眉をひそめる。
「問題は、グロウさんですね。」
「何か問題あるの?」
「ええ。グロウさんが相手にしているのは、一人は徒手空拳ですが、もう一人は仕込み針ですね。グロウさんにとってあれは難敵だというのは、大体予想がつくでしょう?」
「まあ、確かにそうね。グロウがあいつの相手をするのは大変かも。」
グロウはもともと、雑魚を一掃する戦いが向いている。だから一撃が大きい分、隙も大きい。
それ故に、あんなふうにちょこまか動きながら、小さいけれども、確実にダメージを与えてくる相手は不得手なのである。
加えて、拳法を使ってくる相方との連携も優れている。