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赤のミスティンキル

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「分かったわ。今、消し去るからね」
 ウィムリーフは風を起こし、辺り一面の霧を打ちはらった。
 すると――

「ウィム――!!」
 今まで気づかなかったのだが、あろうことか新たに二匹の竜が、彼女の眼前にまで迫ってきていた! ウィムリーフは驚きのあまり身体が固まってしまい、何も対応できない。
 二匹の竜はさきの竜達よりも年長で、彼らがことごとく敗れ去ったのを知って復讐のためにやってきたのだ。霧に隠れて老獪にも音を立てず、気取られないようにしながら。
 反撃する時間がない!
 龍《ドゥール・サウベレーン》の業火ではウィムリーフまで巻き込まれるし、ミスティンキル自身はようやく攻撃の態勢を整えようとしているが、とても間に合わない――。
 竜は腕を伸ばし、鋭利な爪で必殺の一撃を与えようとしている。
 ウィムリーフは目を閉じ、体をすくめた。
 ミスティンキルも覚悟を決めたそのとき、それは起きた。

 カッと、ウィムリーフの身体がまばゆく光り輝いた。次の瞬間には大きな青い氷柱のようなものが二本、彼女の身体から出現して二匹の竜の巨躯を貫いた。竜の躯は青い光に覆い尽くされ――そして跡形もなく霧散した。

◆◆◆◆

 ミスティンキルは我に返った。大きな力を持つ四者によって竜はすべて打ち倒され、戦いは終わった。それにしてもウィムリーフの顕現させた力は明らかにミスティンキルの魔力を上回っていた。やはりウィムリーフも自分と同じく、月の世界で魔導のすべを取り込んだのだろう。彼は結論づけた。

「終わったの……ね?」
 おずおずとウィムリーフがたずねる。自身が最後の二匹の竜を討ち滅ぼしたことに釈然としない様子がうかがえた。
「ああ」
 ミスティンキルは彼女のところまで飛んでいき、手をさしのべた。
「行こうぜ。陸地がすぐそこにある」
 新たな竜討伐の伝説が書き加えられ、今度こそ戦いは締めくくられた。






作品名:赤のミスティンキル 作家名:大気杜弥