赤のミスティンキル
【超常の様相を呈してきたか。覚悟せよ、赤のミスティンキルよ。事と次第によっては、アリューザ・ガルド世界に影響する事態が勃発するかもしれぬぞ。わしらは真っ先にその事態と向き合わねばならなくなる】
“世界の色褪せ”のときと同じように、またしても自分は世界そのものと関わってしまうというのか。それが“運命”というものなのだろうか。
「どのみち、行くしかねえだろう!」
ミスティンキルは発破をかけた。ヌヴェン・ギゼの崩壊が始まった。ほどなくしてこの屋上は瓦解するだろう。ミスティンキルは龍の背中に座した。
「さあ、飛んでくれアザスタン! さっきおれは『無茶をするな』と言った。けれど今度は違う。無茶をしてくれ!」
【応】
アザスタンは翼を広げて空中に舞い上がった。
時ここにおいて、龍はとうとう本領を発揮した。隼もかくやとばかりの凄まじい速度をもって、風を切り裂くように飛ぶ。真下には青い魔力の流れ。それよりも速く龍は空駆ける。四つの魔力が衝突する前に、あの地へ到着できるかもしれない。
背後で、ヌヴェン・ギゼが崩落していく音が聞こえた。だが彼らは振り返ることなく、黙したまま前を見て進むのだった。
[第十章へつづく]