落ちてきた将軍
「親分・・・いったい何が起きようとしているのですか・・・この怪しい天気も、あの小娘の仕業だと・・・?」
「ああ・・・間違いない・・・あの小娘はとんでも無いヤツのようだ・・・こりゃ、凄い事が起きそうだぜ・・・銀二、チャカは持っているな」
「はい・・・勿論です」
「よし・・・皆、いいか!自分の身は自分で守れよ。それから、あの小娘達に何か起きそうだったら助けろ・・・良いか!」
小娘だろうが老婆だろうが、竹内親分が助けろといえば、命を張ってでもそうしなければならない。
「ヘイッ!」
ヤクザの集団は、モクモクと湧き上る黒い雲を見上げながら、静かに楠の木に近づいていった。
「徳川家慶・・・・か・・・・こりゃ、とんでもない事に出くわしたようだぜ・・・面白い!」
銀二を含む数人の男達は懐からチャカを取り出し、安全装置を外した。他の男達もハンティングナイフやドスを手にしている。その姿を目撃した近所の住人が、ヒッ!と声を漏らして路地へと逃げ込んでいった。
臨戦態勢である。暗雲の中で閃光が右へ・・・そして左へと走っている。その煌きに少しだけ遅れてゴゴゴ・・・という轟きが空から地に伝わってくる。蘭は額に玉のような汗を浮かべ呪文を唱えていた。そして、声高に叫んだ。
「龍よ!・・・・出でよっ!」