落ちてきた将軍
第11章 再び召喚
室見川河畔。
「お殿様・・・ヤクザが二人・・・」
振り向くと、サングラスをかけた二人組みが、距離を空けて追って来る。身を潜めながらの尾行とは程遠く、肩を揺らしながら行きかう人を威嚇するように歩いていた。
「構わぬ・・・博徒など捨てておけ」
「再び、手を出すようならば、この私が息の根を止めます」
「はぁ・・・蘭ちゃんって、見た目はどう見ても可愛いお嬢様なのにね・・・凄すぎるわ」
「お転婆が過ぎますか?・・・姉上」
「えっ!・・・蘭さん・・・今、何って言った?先輩のこと姉上?」
「はい・・・綾乃様は私の姉上に・・・契りを交わしました。」
「うそ〜・・・本当なの?」
「ええ・・・私、本気よ」
「先輩がそう言うなら、そうなんでしょう・・・じゃあ、蘭さんはお江戸には戻らないの?」
「いえ・・・妹になっても、私は伊賀忍者でございます。家慶様を江戸へお戻ししなければ・・・でも、心は綾乃様と固く結ばれていると・・・そう信じます。」
「そういう話が出来上がっておったのか」
家慶の顔が綻んだ。この男、爽やか過ぎるほどの笑顔を作る。根っからのお坊ちゃんとはそういうものなのだろうか。