落ちてきた将軍
「な・・・何だ・・・一体どうやって動いてる!?足も・・・何にも動かしちゃいねぇぞ・・・あれじゃ、ナンボ突いても無駄じゃねぇか・・・」
「ハッ!・・・ハッ!・・・クソッ・・・ハッ!」
銀二もバカではない。蘭の不思議な防御に翻弄されながらも、必殺のチャンスを窺っていた。突きを連発しながら間合いを計る。相手は目の前。銀二の右足が、ぶうんっ・・・と唸りを上げて、凄い速さで蘭のコメカミを襲った。
「ふっ・・・おサラバだ!」
だが、右足は空を切った。
「な、何だ!?」
銀二は信じられないという顔をした。間違いなく右の回し蹴りは、蘭のコメカミにヒットしたはずだ。空を切った右足の回転は、止まるべき場所を失い、銀二はくるりと回転、蘭に背中を見せた。
刹那。蘭は中に舞うと、指を槍の様に構えて真っ逆さまに、銀二の脳天目がけ、落ちていった。
「あいや!そこまで!・・・勝負あった!」
蘭はその声に反応するかのように身を翻すと、猫のようにくるりと回転して地に足を着いた。
「もう、良いだろう。あのままでは、その男の脳天は割られていたぞ。どうだ、もう、良いだろう」
「くっ!・・・冗談じゃネェ・・・勝負は未だついちゃ・・・」
家慶の笹がヒュンと唸った。銀二の鼻先でピタリと止まる。
「男らしくないな・・・おぬしの負けじゃ。負けを認めぬというなら、この家慶が相手するぞ。」
「くっ!・・・」
竹内が腹を突き出しながら歩み寄り、銀二の肩を軽く叩いた。