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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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落ちてきた将軍

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「娘さん・・・言っておくが、この銀二は手ごわいぞ。その愛らしい顔が二度と見られなくなるが、それでも良いかな?・・・ふふっ」
「やれるものなら、やって見るが良い」
「胆の据わったお嬢さんだ・・・銀二・・・構わねぇ・・・手加減はいらねぇぞ・・・潰してしまいな」
「美人のお嬢さんを嬲るのは、ちょいとばかり勿体無い気がするが・・・勘弁しろよ」

 銀二は間合いをジリジリと詰めると、蘭の胸元目がけて、鋭い「突き」を入れた。
 蘭が引く。再び銀二の「突き」・・・引く。
 銀二には自信があった。若い頃は空手の道場に通い、己を鍛え上げてきた。無論有段者で、今は道場にこそ通ってはいないが、修練に修練を重ねた突きには自信がある。目の前の華奢な女など、己の突きを一発入れれば、その胸骨は砕け、運悪ければ死ぬであろう。
 銀二は蘭を哀れに思いながらも、残忍な表情を浮かべながら、ぶんっ・・・という音を立てて突きを繰り返した。

 不思議な事が起こった。間合いは詰めている。その事は、幾多の実線で把握していた。だが、突きが届かない。すり足で間合いを詰め、仕留めたと思った時には、その数センチ向こうに蘭の胸が遠ざかるのだ。

「小しゃくな・・・ハッ!・・・ハッ!」

 銀二の突きのスピードが、気合と共に速くなる。突く・・・引く・・・。
 だが、何度突いても、その数センチ先で、蘭は涼しい顔をして立っているのだ。驚いたのは、竹内親分と、男達だった。
 銀二は、突きを入れるたびに、ザッ・・・ザッと玉砂利を蹴散らす音を立てながら足を交互に動かしている。だが、蘭の足は全く動いていなかった。
 折り紙で作った船を水に浮かべて吹くように、蘭の体は、銀二の突きが起こす風で、ふわり、ふわりと、後ろへ逃げてゆくのである。
作品名:落ちてきた将軍 作家名:つゆかわはじめ