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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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落ちてきた将軍

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 西の空に黒い煙が上がっている。最初は火事かとも思ったが、そうではないようだ。雲・・・黒い雲が、異常な早さでモクモクと発達し、四方へと広がっている。綾乃は、かつて、このような雲の広がりを見た事が無かった。

「いやだ・・・何だか薄気味悪い・・・帰ろう・・・。」

 そう独り言を言って、立ち上がったときだった。凄まじい音の落雷が立て続けに起きた。

「きゃーーーっ!」

 綾乃は、耳を劈くばかりの轟音に身を竦めた。風が起こり、雨粒が綾乃の頬を打つ。綾乃は更に小さく身を屈めた。

「こ・・・怖い!・・・助けて!」

 楠の大木が枝を揺らし、ザザッ・・・ザザザッ・・・と、ざわめく。
 ごうっ・・・という風切り音がした瞬間、腕ほどもある楠の枝が鈍い音を立てながら折れて、綾乃の側にドサッと落ちた。落ちた弾みで飛び散った楠の葉が、綾乃の頬を掠めた。

「きゃっ!・・・何?・・・一体何なの?」

 綾乃は、恐るおそる、空を見上げた。
 いつの間にか黒い雲は、手の届きそうな程に、低く垂れている。その奥で、怪しくも眩いばかりの光が明滅するのが見えた。ドロドロと鈍い音を轟かせていた。
作品名:落ちてきた将軍 作家名:つゆかわはじめ