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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
novelistID. 29805
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落ちてきた将軍

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 一人は慌てて起き上がると、赤い唾を吐いた。吐き出した赤い唾と一緒に白い歯が二本混じっていた。
 反対側に飛ばされた男は完全に気を失い、駆け寄った仲間に抱えられるようにして、後ろへ運ばれていった。
 思いもかけなかった小娘の攻撃に集団が色めき立った。不意を襲われた集団は、統率が乱れた。竹内と名乗る組長の後ろに控えていた男が、組長の腕を引いた。

「親父を頼む!」

 後ろの男達に託すと、ずいっと前に出た。

「俺が相手だ!」

 腕一本分の間合いを置いて、蘭と対峙する。膝を曲げ、両拳を顔の前で構えた。さながら香港のカンフー映画のようだ。様になっている。腕に自信があるのだろう。
 男達は、対峙したまま動かない二人を、丁度、鶴が羽を広げた様な格好で取り囲んだ。
 男は、集団の中に居た時には然程目立つ存在ではなかった。集団の中では最も小柄である。だが、その構えには自信に溢れていた。
 その間、紀子と美穂は家慶に促されて、綾乃が立ち竦む桜の木の下へと逃げた。家慶はと言えば、いつの間に手にしたのだろう、笹の枝を右手に持ち、左の肩をトントンと、まるで祭りの出し物でも見るかのように離れた所から傍観している。とにかく、皆の視線は、蘭と男に注がれた。
 二人は、互いの目を見据えたまま、微動だにしない。男達が一気にたたみかけようとしたのを、竹内が左腕を肩の高さまで上げて制した。

「待てっ!・・・銀二に任せろ」

 へいっ!・・・そう言わざるを得ない。
 竹内が、銀二に任せろと言ったのは、彼に任せれば事が足りると思ったからではない。目の前の、二十歳そこそこの、自分の娘よりも幼い女が見せた跳躍力と破壊力は、若い頃から修羅場を見てきた竹内にも始めての光景だった。どんな格闘技を習得しているのか・・・それを確かめたかった。
 とにかく、続きが見たかった。蘭の力を見たいが為に、血気盛んな若い連中を制しただけだった。
作品名:落ちてきた将軍 作家名:つゆかわはじめ