落ちてきた将軍
「いったい・・・どうしたんですか・・・バタバタ・・・」
「蘭さんが・・・死にそうなの!」
その言葉は、寝起きの二人にとって覚醒剤になったようだ。瞼が最大限に開いた。
「えっ!」と、二人が叫ぶと同時に、家慶が蘭を抱えて入ってきた。
「不味い・・・ほとんど息をしておらん・・・それに、心の臓も鼓動が少ない・・・・・綾乃殿。お湯は張ってあるか!・・・それに、酒だ!酒を頼む!」
「はい!毛布をソファの上に出しています。お湯は今暫く・・・お酒・・・今すぐに!」
家慶は、蘭を居間に運ぶと、雪で濡れた服を脱がした。蘭は、瞬く間に下着姿にされ、その美しい肢体を晒した。
紀子と美穂は、緊急事態にも関わらず、その美しさに言葉をなくした。
鍛え上げられた蘭の肢体は、丸みこそ少ないが、躍動感を感じる。動物に例えれば、俊足のチータやピューマと言ったところだろう。
家慶は、すぐさま蘭を毛布で包み、抱きかかえるようにしながら、摩った。
「手拭いをくれ。髪が凍りついておる」
「た・・・ただ今!」
紀子は風呂場へ走ると、バスタオルを持ってきた。美穂は、その後をついて一緒に走り回る。自分も何かをしなければ・・そういう心境なのだろう。
蘭の髪を優しく拭き上げる家慶を見ながら、その表情には一体何があったのかという、疑問に満ちていた。だが、そんな事を聞いている場合で無い事は分かっている。綾乃が、湯飲みを、両手で包むようにして持ってきた。
「ブランデーにお湯を足してきました」
「酒か?」
「はい・・・西洋のお酒・・・気付けにはこちらが良いです」
「そうか。ワシが抱いている。すまぬが、蘭に飲ませてくれぬか」
「はい」