落ちてきた将軍
「もぅ・・・神様の意地悪」
綾乃は、再び小銭を取りだして放った。またもや賽銭箱の角。今度はコロコロと転がって祭壇の前でパタリと倒れた。
「うっ・・・なんで?・・・私、神経がどうかしちゃったの?」
綾乃は財布の中を探った。小銭が無かった。
「うそ・・・え〜っ・・・どうしよう・・・万札しかないよ・・・」
綾乃は、財布の中を覗き込んで暫し考えた。中には万札が1枚だけ入っている。このまま、手を合わせて帰るか・・・大枚を投げ込むか。暫く考え込んだ綾乃だったが、はたと、空を見つめると、人だかりを掻き分けて、社務所へと向かった。
「すみません。これ・・・お賽銭あげたいので小さくしていただけませんか?」
アルバイトらしき巫女が、笑顔で両替をしてくれた。千円札、一〇枚。
「えっ!?・・・・ま、いいか・・・ありがとう」
綾乃は再び、人垣を掻き分けて拝殿へ向かうと、小さく折りたたんだ千円札を、今度は慎重に賽銭箱に向かって放り投げた。
「入れ!・・・あっ!」