落ちてきた将軍
三人を乗せたステーションワゴンは、あっという間に綾乃の家に辿り着いた。紀子は、駐車場に車を滑り込ませると、サイドブレーキを引いて、ドアを開けた。
「蘭さん・・・来て!中に居るわ」
「私は庭で待つ」
「えっ!?どうして?」
「そういう決まりだ」
「ふ〜ん・・・そう・・・じゃあ、待ってて・・・家慶様を呼んでくるわ。・・・美穂ちゃん、行くわよ」
「は・・・はい!・・・ううっ・・・腰が・・・」
「もうっ・・・ほら、肩に掴まって!」
紀子が玄関のドアを開けようとすると、いきなり横に開いた。
「おかえり!・・・エンジンの音がしたから・・・どうだった?」
「いたのよ・・・!」
「えっ!・・・まさか・・・・また龍が?」
「違う!・・忍者よ!」
「はっ?・・・忍者?」
「そう、凄く美人の忍者!」
「落ち着いて・・・で、その忍者がどうしたの?」
「庭に居るわ・・・庭で待つって言うから」
「何処よ・・・見えないけど」
「もう!・・・ほらっ、あそこ!・・・?・・・ああっ!・・・消えた」
「二人とも・・・大丈夫?」
「何処に行ったんだろう・・・庭で待つって・・・言ったから・・・ねぇ、美穂ちゃん、蘭さんはそう言ったわよね」
「はい・・・確かに、お庭で待つからって・・・そういう決まりだからって、言ってました」
「そう・・・忍者が、家慶様を探して、江戸からやって来たのね」
「・・・だと思います」
「でも、消えたと言う訳ね・・・もしや・・・刺客!?」
「あああっ!・・・やっぱり!?・・・家慶様が危ないかも!」
「家慶様!」