落ちてきた将軍
「わ、分かった・・・分かったから・・・その刀を下ろして」
「私を騙すなよ。騙せば・・・命は無い」
「わ、分かった・・・分かってる・・・何か、超〜凄そうな人・・・ねぇ、敵じゃないわよね・・・」
「安心しろ。敵ではない」
蘭が、美穂の喉許から刀を引いた。美穂は、へなへなと腰を崩した。涙を浮かべ、がたがたと震えている。
「ひっ!・・・いつも、私ばっかり・・・ひっ・・・・ひっ」
「済まなかった・・・許せ。最初から、殺意は無い」
「連れ戻しに来たのね・・・家慶様を連れ戻しに来たのね」
「うむ・・・」
「あ〜良かった・・・直ぐ近くよ。連れて行ってあげるわ・・・・美穂ちゃん、一気に進展しそうよ・・・美穂ちゃん、帰りましょう」
「あああ・・・だめ・・・腰が抜けて・・・動けないですぅ・・・」
「ほら、私に掴まりなさい・・・あなたも手伝って」
「うむ・・・・肩を貸そう。ほら、掴まれ」
美穂は、両脇から、抱えられるようにして車へ運ばれた。紀子は鼻息が荒い。頬が桜色を超え、桃色に染まっていた。それもそうだ。雲を掴むような話だったのが、突然に光が見えてきたのだ。興奮するな、という方が無理だろう。
白装束の忍者が、どうやって、この場所までたどり着いたのかは分からないが、確実に過去と現在を結ぶ「何か」がある事は確かだ。車を発進させると、紀子の、アクセルを踏む右足に、力がこもった。
「ち、ちょっと・・・紀子さん、飛ばしすぎ!」
「ゴメン、ゴメン・・・気が焦っちゃって!・・・私、紀子です・・・あなたは?」
「蘭と申す・・・これは・・・なんと言う乗り物だ」
「あ、これ・・・自動車!」
「・・・目が回るようだ」
「まかせて!・・・これでも、運転は得意なのよ・・・」