落ちてきた将軍
綾乃は、それぞれに湯飲みを差し出した。勿論、家慶が誰よりも先である。
「かたじけない・・・おおっ!吉兆じゃ」
「吉兆?」
「そうじゃ、綾乃殿・・・茶柱が立っておる。良い事が起きるやも」
「あら・・・私も!先輩、私のにも茶柱が・・・」
「きゃ〜私もですぅ!先輩!・・・きっちょ〜!・・綾乃先輩は?ひょっとして、先輩のも?」
「私のは・・・底に・・・沈んでる・・・賽銭箱と同じね・・・神様の意地悪」
「まぁ、良いではないか・・・四人のうち、三つの吉兆じゃ・・・めでたいではないか、ハハハ」
「何だか良い事が起きそうじゃない?・・・美穂ちゃん、行こうか?」
「はい!」
「二人とも気をつけてね・・・特に暴走族」
「はっ・・・そうだった・・・何だか、怖いな・・・暴走族がいたらどうしよう・・・」
「あら、美穂ちゃん。もう怖気づいちゃったの?・・・だったら、止す?私一人で行ってくるから大丈夫よ」
「あ・・・いえ・・・やっぱり、行きます!」
「そう?・・・じゃあ、日が暮れないうちに行きましょう。さっきまで、晴れていたのに、雲が出てきたわ」
「はい!」
紀子は腕時計を見た。
「今、一時だから、二時までには戻ります」
「うん。歩いても行けるけど、用心の為に車を使ってね」
「じゃあ、先輩の車、借りますね」
「そうして」