落ちてきた将軍
紀子と美穂は、最初は、聞いた話を鵜呑みにしていた訳ではなかった。二人とも、綾乃の事を尊敬している。しかし、七信三疑・・・そんな辺りだった。三割は、この目で見てから穴埋めをするつもりだった。しかし、家慶の話す史実が余りにも正確で、それに、映像が浮かぶ様に話すものだから、紀子と美穂は、すっかり家慶を崇め奉る程にまでに、家慶に傾倒していた。
「家慶様・・・落ちてきた場所・・・その楠木がある祠に、過去と未来を繋ぐ入り口があるのではないですか?」
「うむ・・・紀子殿。手がかりと言えば、あの楠木しかないであろうな」
「行って見ましょう!・・・その場所」
「そうでございますよ・・・行って見ましょう」
「美穂殿もそう思うか?」
そんな、誰でも考えつくような事を真剣に話している三人を、綾乃は鼻で笑いながら、話の腰を折った。
「駄目よ」
「綾乃殿は反対か?」
「だって、その格好で、うろうろしてたら、必ず誰かに見られるわ。ここで、こうして、ひっそりと暮らしているのに・・・」
「忙しい世の中であるな」
「じゃあ、私と美穂ちゃんとで、ちょっと見てきます。何か手がかりがあるかも・・・先輩、場所を教えてください」
綾乃は暫し考えたが、偵察も必要と思い、チラシの裏に道筋を描いた。紀子は、ジャケットを羽織ると、綾乃が描いた地図をポケットに押し込んで、美穂を促した。
「いこっ!・・・美穂ちゃん」
「二人とも、お茶入れたから、飲んでいけば?」
「あ、はい!・・・頂きます」