落ちてきた将軍
「くっ!・・・しくじったか!」
「蘭!・・・逃げろ!・・・はやく逃げろっ!」
「くくっ・・・心配・・・ご無用!」
蘭がそう言った途端、龍は、蘭を頭から飲み込むと、その巨大な体をうねらせながら、天へ昇っていった。
「ううっ!・・・蘭!・・・」
余波が襲う。雪が舞い上がり、忠邦の袂が、ばたばたと音を立てた。舞い上がった雪が、忠邦の目に、口に飛び込んだ。そして、竹林に静寂が戻った。
呆然と佇む忠邦を、猪と鹿が、離れた所からじっと見ていたが、降雪の闇へと消えていった。忠邦の足許には、子供の頭ほどの鱗が、鈍い光を放ちながら落ちている。
忠邦は、その鱗を拾い上げると、天を仰いだ。
「蘭・・・一体、どうすれば良いのじゃ・・・蘭・・・」
ボタン雪は、いつしかキメの細かい粉雪に変わり、戦いの痕跡を消していった。