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つゆかわはじめ
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落ちてきた将軍

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第7章 召喚の術

 蘭の血筋は、上忍三家(服部、百地、藤林)の中、服部一族の系譜を持つ。
 上忍は、組織の最高位で、忍者のまとめ役である。忍者の中でも、主君にお目見えが出きる地位で、帯刀も許されていた。だが、いざ戦となれば、その地位は足軽でしかない。

 徳川家康が、「本能寺の変」で三河に逃げる際に、家康の警護で活躍したのが、蘭の先祖である服部半蔵正成である。家康は、服部半蔵の功績を認め、江戸城の西、甲州街道に続く門に、「半蔵門」と名前をつけた。今の、皇居にある「半蔵門」がそれである。
 因みに、半蔵という名前は四代まで継承され、この半蔵は二代目になる。蘭の父親は服部弥次郎、母を飛梅と言ったが、蘭が五つの時に、何者かによって殺されている。孤児になった蘭は、その後、百地家に引き取られ、そこで修練を積んだ。
 百地家も、「百地丹波(百地三太夫のモデルになった人物)」という稀代の忍者を出している。言わば、蘭は、一級の家系で、一流の修行を積んだ事になる。
 伊賀忍法では、五隠遁の術が有名である。火遁の術、水遁の術、木遁の術、金遁の術、そして、土遁の術である。他にも、様々な術があり、その中に、獣遁の術と言うのがある。伊賀はネズミ、甲賀は猫を多用した。しかし、その獣遁の術を極めた、究極の術が存在した事は、余り知られていない。
 
 「召喚の術」
 それは、幻術(まやかし)ではなく、実際に森に棲む、鹿や熊を呼び出し、動かす。敵をかく乱、もしくは、攻撃する術の事だが、その術を習得した忍者は、忍者の歴史上でも少ない。蘭は、この時代、その「召喚の術」を習得している只一人の伊賀忍者だった。
作品名:落ちてきた将軍 作家名:つゆかわはじめ