落ちてきた将軍
「この錆びた太刀が、瑞剣であると申すか?」
「私の目に狂いはありません。妖剣・村正を鞘から抜いた時、この蘭の心に風が起きました。しかし、その無銘の剣を抜いた時には・・・」
「・・・どう感じた」
「はい・・・まるで雷に打たれたように・・・体中が痺れました・・・私の中に流れる冷たい血が、ふつふつと沸き立つように熱く感じました。初めての事です。紛れもない瑞剣です。腕の良い研師に研がせて下さい。光芒が立つはずです。そして、金を貼った鞘に収めるのです。その瑞剣なら・・・」
「仕留められるか!?」
「恐らく・・・」
「蘭・・・忍者にしておくには、勿体無い女じゃな」
「女ではありません・・・。それに、私は、この体を流れる、赤い血までが、忍者です」
「どういう事じゃ」
「お話しする程のものではありません」
「話せ」
「・・・・・・・・」
「この忠邦・・・おまえに興味を持った・・・話せ」
「私は・・・くノ一・・・でございます。女と言う字を崩して・・・くノ一。
女を捨て、人の喜怒哀楽からも・・・喜・哀・楽・・・を捨てたのです。残るのは・・・怒・・・のみ。私は、女でも人間でもなく・・・忍者でございます」
「そこまで己を追い詰めて、辛くはないか?」
「その感情も捨てております」
忠邦は、無表情で佇む欄を眺めながら、首を傾げた。