落ちてきた将軍
「お背中だけでよろしいです・・・よね」
「当たり前だ・・・何を考えておる」
「うっ・・・まるで私がエロ女みたいな言い方・・・」
「何をボソボソと言っておる・・・中に入って洗うのじゃ」
「・・・はい・・・畏まってそうろう」
風呂場は昔の造りである。マンションなどにあるような、狭いユニットバスでは無い事が、せめてもの救いだった。意外と広い風呂場なのだ。
綾乃は、ドアを大きく空けて風呂場に入った。湯船で背中を向けていた家慶が、振り向いて笑顔を見せた。あの、初夏の庭草を吹き抜ける風の如く・・・である。綾乃は、この笑顔には敵わないと思った。
綾乃は目線を家慶から逸らしながら、風呂場に入った。すると、家慶は湯船から立ち上がり・・・。
「きゃっ!・・・お殿様、前を・・・前をお隠しあそばせ」
「ウブよのぉ・・・ハハハ・・・すまなかった。許せ」