落ちてきた将軍
「忠邦さんって・・・お友達なのね」
「様」
「はい、はい。・・・どうして忠邦様が・・・ご・・・心配なの?」
「ワシが神隠しに遭ったとなれば・・・忠邦・・・切腹は免れまい。急いで戻る必要がある」
「せ・・・せっぷくぅ!?」
「ウム・・・実直な忠邦の事じゃ・・・ワシを見失った責任を取るであろうな・・・」
「どうして?・・・お殿様を連れ去ったのは龍でしょう?・・・どうして忠邦様が責任を取らないといけないの?・・・しかも、切腹だなんておかしいわ」
「そういう決まりなのじゃ・・・決まりとは、陽の昇降と同じ・・・変えられない」
「じゃあ、早く戻って!」
「その方法が解れば直ぐに戻るさ」
「あるの?方法って・・・あるの?」
「無い・・・今は無い」
「無いって・・・良く平気でいられるわね・・・お友達が切腹するかもしれないと言うのに・・・」
「忠邦は・・・」
「・・・・忠邦様は?」
「将軍、家斉様にも慕われておるから、大丈夫であろう」
「何よ!・・・それを早く言いなさいよ!・・・もうっ!本気で心配したのにっ!」
「あいや・・・済まぬ」
「大丈夫なのね?・・・忠邦様は、切腹しなくても大丈夫なのね?」
「将軍、家斉様は思慮深い方じゃ。心配無いであろう」
「あ〜〜良かったぁ・・・もう、心配したわ」
「ほぅ・・・会った事も無い忠邦を案じてくれるとは、心優しい。綾乃殿」
「・・・なに?」