落ちてきた将軍
「いけない・・・ごめんなさい。お許しくださりませ。」
「今のは、我が世であれば、打ち首物だぞ。綾乃殿は・・・何か・・・癪を持っておるのか?」
「しゃく?」
「うむ・・・胸が痛むのか?・・・なにやら、心の病でもあるのではないのか?だから、そう、イラついておるのであろう?」
「な、何よ・・・医者みたいな事を言わないでよ」
「城は女の数の方が多いのだ・・・将軍ともなれば、大奥に2000人の女がひしめき合っておる。女を知るのも主の務めなのだよ」
「でも、お殿様は将軍様ではないのでしょう?だったら、大奥になど御用は無いはず」
「まぁ、そうではあるが、武士の嗜みの一つだよ。それに、蘭方も学んでおる・・・具合が悪ければ診て進ぜるぞ」
「け、結構でごじゃります・・・それより、お殿様・・・予定を教えてください。」
「予定?」
「そう、予定。まさか、此処でずっと暮らすつもりではないでしょう?お殿様が江戸城に戻らないと大変な事になるわ」
「もう、なっておるであろう・・・忠邦が心配だ」