落ちてきた将軍
「あの・・お侍さん」
「家慶じゃ」
「そう・・・あの家慶さん」
「様・・・とつけるのが相応しい・・・ここは未来かも知れぬが・・・様。家慶様と呼べ・・・苦しゅうない」
「うっ・・・様・・・」
「女・・・名は?・・・名は何と言う」
「何だか、ムカつくけど・・・・綾乃よ・・・疋田綾乃」
「言葉が汚い!」
「くっ!・・・はぁ〜・・・綾乃と申します・・・家慶様」
「うむ・・・やれば出来るではないか。綾乃か・・・美しい名前じゃ」
「そ・・そう?・・・ありがとう」
「これっ!」
「うっ・・・さようでござりまするですか・・・うれしゅうごじゃりまする」
「すこしばかり・・・学習が必要じゃな・・・まぁ良い」
「お聞きしても?」
「苦しゅうない・・・何でも申せ・・・許す」
「ムカッ・・・家慶様は・・・あの家慶様でございますか?・・・徳川将軍の・・・あの徳川家慶様?」
「いや・・・将軍は家斉様じゃ」
「なんだ・・・将軍様じゃないの」
「何だとは何だ・・・」
「あっ!・・・次期将軍でござりまするね?」
「慎め・・・未だ家斉殿がご在位じゃ」
「これから、どないされるおつもりでごじゃりまするか?」
「綾乃殿・・・お前は、わざとそのような可笑しな言葉を使っておるな?・・・この家慶を・・・信じておらぬな?」
「だって・・・信じろという方が・・・」